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【科学力】

 京都大で9月13日まで、「京大100人論文」というイベントが開かれた。研究者同士を結びつけて新たな知を生み出す、研究者の見本市だ。分野を超えて研究者を結ぶ異分野融合は国もイノベーション政策の一環で進めているが、「100人論文」はそうしたトップダウン式とは異なる試みのようだ。会場をのぞいてみた。(嘉幡久敬

人気テーマに色とりどりの付箋紙

 京都市の京都大学吉田キャンパス。会場の建物のエントランスホールには何枚ものボードが立ち、研究テーマの提案を300字以内でまとめた250枚の紙が掲示されている。

 「何ができる? 芸術と科学の融合」 どうすれば人々を感動させられるか? 人々が幸せを感じられるのはどういう時か? どのような方法でそれを実現できるか?

 「歩くことってなんだろう」 解剖学的な観点だけでなく、文学・文化史、哲学、農学、工学、さまざまな側面から「歩くこと」をどうとらえているかを教えてほしい。

 「数えるとは何か」 数に焦点を当て、世界の諸言語を観察し、人間の普遍的な認識のあり方を考察する。

 ほかにも「空気と空間」「人間の五感について」「あなたの研究の学問性は」「食べることとは何か」といったテーマが並ぶ。

 提案しているのは学内の教員、大学院生、職員ら86人。特定の装置や物質の開発といった研究は少なく、より根源的な問いが多い。

 来場者は関心のあるテーマを読み、コメントをペンで付箋(ふせん)紙に書き込んでその上に貼っていく。「面白い」「もう少し詳しいことを知りたい」「今の日本のエネルギー問題にも共通するテーマ」など、コメントは様々だ。人気のテーマの上には色とりどりの付箋紙が貼られ、たくさんのチョウのように見える。

 「100人論文」は、京都大学学際融合教育研究推進センターの主催で、今年で5回目。研究者の出会いの場を作って共同研究につなげることが目的だ。来場者は若い人が多く、学外の人もいた。5日間の会期で534人が来場し、1300枚の付箋紙が貼られた。

大学、企業……広がる「100人論文」

 提案側と来場者が合意すれば連絡先を交換し、交流が始まる。4回目の昨年は40件以上の交流が生まれた。だが、今年は共同研究よりむしろ、「自由闊達(かったつ)な対話」の実現を重視した。提案側は匿名とし、来場者側が提案者の専門分野や職位、性別などに惑わされず自由に意見交換できるようにした。

 企画したセンターの宮野公樹准教授は「このところ研究現場は成果主義に押され、大学が本来めざすべきものが見えなくなりつつある。学問を通じてお互いに研鑽(けんさん)する場を作りたいと考えた」と話す。クラウドファンディングで50万円以上を集め、運営にあてた。

 「100人論文」をモデルにした企画は全国に広がりつつある。関西大、茨城大、横浜国立大、広島大が導入しているほか、導入を検討する大手企業もある。多くの大学が、融合を達成する最適な方法を求めて模索している。

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