シリーズ:眠る
胃がん、脳梗塞…闘病の妻 介護の末に夫を襲った喪失感
月舘彩子
患者を生きる・眠る「遺族のうつ」(3)
福島県いわき市の男性(81)は埼玉医大国際医療センター(埼玉県日高市)の遺族外来で、うつ病と診断された。妻を亡くして約8カ月後、2018年8月のことだった。
それまで、複数の医療機関を受診しても「年のせい」「異常はない」と言われるばかりだった。「診断名がついたことで、安心した」と男性は言う。
抗うつ薬のイフェクサー(一般名・ベンラファキシン)をのみ始めた。だが、すぐに症状が改善したわけではなかった。
センターを受診して数日後、妻の新盆を迎えた。いわき市では、「じゃんがら」と呼ばれる念仏踊りが、新盆の家々をまわる。友人が自宅を訪れてくれたが、男性はベッドから起き上がることができなかった。「起きなくては」と思っても、体が言うことをきかない。動悸(どうき)がして、どうすることもできなかった。
10歳年上の妻と結婚し、次…