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経世彩民 益満雄一郎の目

 高層ビルが立ち並ぶ香港島中心部で9月28日夜、数十人の若者によるデモ隊が、香港政府の庁舎に向かってれんがを投げつけていた。パリンパリンという甲高い音とともにガラスの破片が飛び散る。デモ隊は拍手で大喜びし、「いいぞ、いいぞ」とあおる。

 この日は、2014年の民主化デモ「雨傘運動」からちょうど5年の節目。5年前、この目の前の大通りを占拠した学生らに警察が催涙弾を発射したのがきっかけで、79日間にわたるデモが始まった。学生側は「非暴力」を掲げ、警察の催涙スプレーに雨傘を広げて耐えたことから、雨傘運動と名付けられた。

デモはなぜ先鋭化したのか

経済という言葉の語源「経世済民」には「世をおさめ、民をすくう」という意味があります。新コラム「経世彩民」では、記者が日々の取材を経て思うこと、伝えたいことを色とりどりの視点でつづっていきます。原則、毎週火曜朝に配信します。

 今回の一連の抗議デモは「非暴力」とはほど遠い。わずか5年で香港の若者はなぜここまで先鋭化したのか。

 雨傘運動は、2017年に予定されていた行政長官(香港政府のトップ)の選挙の民主化を求め、香港政府との対話路線をとった。だが結局、全く譲歩を引き出せないまま挫折した。失望や怒りを募らせた若者たちは平和的なデモの限界を悟り、一定の暴力行為を容認する道へ走った。

 一方、香港政府は、先鋭化の背景に経済問題もあるとみているようだ。不動産をはじめとする物価の上昇や貧富の格差拡大で、「生きづらさ」を抱えた若者が増え、怒りのマグマになっているという見立てだ。

 そこで香港政府は8月、全世帯への電気代の補助金支給を柱とする総額191億香港ドル(約2600億円)の「ばらまき」を発表した。だが、結局、行政長官の支持率は回復に向かわなかった。若者の本質的な不満が経済ではなく、進まない民主化にあるのは明らかだ。

ちらつく「戒厳令」 香港経済への影響は

 いらだつ中国政府は8月、別の一手を繰り出した。香港に隣接する深センで、金融機能を強化するという新方針を打ち出したのだ。香港が長年担ってきた「国際金融センター」の地位を、深センに取って代わらせるぞという牽制(けんせい)球。さらに武装警察を深センに集結させ、経済・武力の両面で香港を締めつける。

 それでも事態が収まらないとなれば、次にちらつくのが事実上の「戒厳令」だ。香港政府は、抗議デモへの参加を強制的に制限できる「緊急状況規則条例」(緊急法)の発動をちらつかせる。行政長官に強大な権限を与え、インターネットなどの通信や移動といった市民の自由を制限する。民主派は当然、猛反発している。

 仮に「戒厳令」が発動された場合、香港経済にはどんな影響が出るのか。

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