カナダ西部バンクーバー郊外のうっそうと茂る森の地中から、古い茶わんなどが大量に見つかった。浮かび上がってきたのは日本人移民の苦難の歴史だ。(バンクーバー=鵜飼啓)
バラード海峡の北側に広がるローワー・シーモア自然保護区。一般車両の通行が禁じられるゲートから5・5キロ、ふもとのキャピラノ大学で考古学を教えるボブ・マッケル教授の案内で遊歩道を外れて森の中に足を踏み入れると、大きな切り株があった。
「学生たちと調査を始めたら、この切り株のところからいろんなものが出てきたのです」。2003年に発掘を始めたマッケルさんはそう振り返る。切り株を利用する形で家が建てられていた可能性があるという。
昔、この辺りに伐採キャンプがあったようだ――。気がついたのは、遊歩道をつくるために周辺を調べていた保護区職員(当時)のマイク・メイヤーズさんだった。両端に取っ手がついた伐採用の古いノコギリが切り株に刺さっていた。
一帯では1890年ごろから1930年ごろまで林業が盛んに行われていた。だが、バンクーバー住民の重要な水源に当たることから次第に規制が強まり、1950~87年は立ち入り自体が禁じられた。ほぼ手つかずのまま放置され、木が生い茂っていた。
次々見つかる手がかり
当初は、作業員が寝泊まりしたよくあるキャンプの一つ、と思われた。だが、連絡を受けたマッケルさんらの調査で地中から日本の茶わんが見つかり、「白鶴」や「参天堂薬房 大学目薬」などと日本語表記のある大小様々な瓶も次々に見つかった。
カナダには1877年に初め…