第7回小さな腫瘍がこぶし大に 「お別れ早いかも」妻は泣いた
僕のコーチはがんの妻 第8話(全16回)
がんになり、記者の僕に料理を教え始めた妻。痛みが増してきても指導は続きます。ある夜、救急車を呼ぶことに。妻のブログのイラストとともにつづります。
2018年2月、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬を併用する臨床試験(治験)に参加する前、長崎を旅した。嵐の前のなぎのような4日間だった。
旅行から帰って4日後の3月1日、「なんだかだるい。脇腹や右肩がチクチクする」と妻が言う。満腹で走った時の痛みに似ているという。せきも増えている。
パジャマに着替えて布団に入り、「転移ではないと思うけど」と言って泣き出した。「お別れがけっこう早いかも。ミツルに悲しい思いをさせてごめんね。もっと自由に仕事で飛び回れるはずだったのに」
「苦労は2人で半分こや。もし先に死んだら、そんなに待たせずに行くから」という僕に、「ダメ! いっぱいいっぱい長生きして、ね。絶対長生きしてね」。
しばらく泣いて落ち着くと、「もっとあちこちの支局に行きたかったねぇ」と妻は言った。輪島(石川県)と紀南(和歌山県田辺市)で職住一体の支局で暮らした。でも、引っ越すたびにあまりの乱雑さに妻はかんしゃくを起こしていた。「異動のたびにぶち切れてたやん」と言うと、「それも含めて楽しいんや。被害者はミツルだけやし」と笑った。
食欲がないというから、宮崎…
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