がんになった妻は、記者である僕に料理を教え始めました。ようやく臨床試験が始まりますが、入院先からもメールで指導は続きます。妻のブログのイラストとともに日々をつづります。

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僕のコーチはがんの妻 第9話(全16回)

 2018年3月4日未明、妻が救急搬送された。翌日、病室に来た主治医によると、腫瘍(しゅよう)で肝臓が膨らみ、包んでいる膜がひきのばされて痛みを発している。肝臓に横隔膜が押されて水がたまり、肺にも小さな転移がある……。

 説明を終えて足早に去る医師を見送りながら、妻は目に涙をいっぱいに浮かべている。

 コンビニでヨーグルトと梅干しのおにぎりを買ってきたら、「おにぎりおいしいねぇ」とやっと笑顔がもどった。食べ終わると「ねえ、頭くさい? お風呂入ってないから獣みたいやろ?」と僕の鼻先に頭を突き出した。飼い犬みたいなにおいがした。

拡大する写真・図版「おしゃれなのは似合わんし、おっさんくさいのは合いすぎるし、どんな服を着てもパッとせんなあ」と、僕の服を買いに行くたびにため息をついていた=妻のブログ「週刊レイザル新聞」から

 夜、帰宅して「今、俺にできることはなんだろう?」と考え、入院中は毎日手紙を届けることにした。手紙を読む数分間だけは、病気を忘れられるだろうから。

 つきあい始めた1998年の日記を見返した。デートのたびに彼女の魅力にからめとられていく当時の僕は滑稽そのもので、恥ずかしかった。

 9日、ようやく臨床試験(治験)の治療が始まった。分子標的薬の服薬と、免疫チェックポイント阻害薬の点滴だ。ただし、薬の効果を見きわめる試験だから、点滴のなかに本当に薬剤が入っているかどうかは患者にはわからない。

■個室から大…

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