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 ジョー・バイデン氏(76)は民主党の重鎮議員として実績を上げ、オバマ政権では副大統領まで務めた。知名度や経歴は申し分なく、トランプ大統領を倒す本命とされる。だが、民主党内からは「大丈夫か」という不安の声が消えない。なぜなのか。

 「我々の憲法を、民主主義を、根本的な誠実さを守るため、トランプ氏は弾劾(だんがい)されるべきだ」

 10月9日、ニューハンプシャー州ロチェスターの選挙集会でバイデン氏が叫ぶと、観衆からは「We want Joe」の大合唱が起こった。

 2020年の大統領選に向けて、民主党支持者の最大の関心は「誰がトランプ氏に勝てるのか」と言っても過言ではない。そんななか、前副大統領として圧倒的な知名度を誇るバイデン氏は、「自分こそがトランプ氏を倒す」と意識した選挙戦を展開してきた。

 主要候補がほぼ出そろった後の4月25日、満を持して立候補を表明。ビデオメッセージで「米国の核心的な価値観が、世界における地位が、民主主義そのものが、そして米国を米国たらしめる全てのものが危機に陥っている。傍観するわけにはいかない」とトランプ政権を激しく批判した。

 5月18日にペンシルベニア州フィラデルフィアで、選挙戦を開始する大集会を開いた時も、トランプ氏を「分断最高司令官」と揶揄(やゆ)。「恐怖を吹き込み、分断をあおり、権力を監視するあらゆる機関をおとしめる。暴君や独裁者の使う手だ」と訴え、自らの政策をアピールするより、トランプ氏を攻撃することに時間を割いた。

 バイデン氏は同時に、「団結して(United)」というキャッチフレーズを掲げる。「トランプ氏によって進められた、米国の分断を修復できるのは、自分だ」というアピールだ。支持者にバイデン氏の魅力を聞いても、「癒やす(heal)」という言葉が返ってくる。

 9月上旬、ニューハンプシャー州で開かれたバイデン氏の集会でもその様子が現れていた。会場は、トランプ氏が選ぶような1万人以上が入るような巨大なスタジアムではなく、300人も入れば、いっぱいになる会議室。ただ、立ち見の人が出るほど満員だった。

 「25年前、私は『女性に対する暴力防止法』を書いた。虐げられてきた女性のためだと思われるかもしれない。しかし、本当は私の父のおかげだった。父が口を酸っぱく私に言ったのは、政治的だろうが、経済的だろうが、そして身体的であろうが、暴力による虐待こそ最悪の罪だということ。それを見て、黙っていることは許されない、と父は何度も私に諭した。現在の米国にも、正すべき偏見の問題は残っている。何とかしなければならないと思い、私の政治活動の多くを捧げてきた」

 演説には、トランプ氏のような熱狂を呼び起こすスローガンや、オバマ前大統領のような格調高い言葉はない。どちらかというと、優しいおじいちゃんが、孫に語りかけるような雰囲気だ。おじいちゃんの説教は、時には退屈だ。聴衆の中には、スマホをいじる人もいる。

 しかし、演説のあとには支持者が次々と近づく。

 ある女性はこう切り出…

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