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 50代も半ばに差しかかった私は焦りを感じている。ロンドン・ビジネス・スクールのリンダ・グラットン教授は「LIFE SHIFT 人生100年時代の人生戦略」(東洋経済新報社)で新しい人生計画が必要だと説く。「定年後」(中公新書)の著者、楠木新さんは「50代からの助走」をすすめる。正解はないだろうが、どう考えればいいのかも分からない。

 そんな不安を抱える私は、ある「人生の先輩」に出会った。横山祐二さん、59歳。福島県川内村で温泉施設やレストランなどを運営する第三セクター「あぶくま川内」の取締役営業部長である。

 川内村は、東京電力福島第一原発事故で「全村避難」を余儀なくされ、一時、人口はゼロになった。いま居住制限は解除され、約2600人が暮らしている。

 横山さんとの出会いは今年2月、東京の表参道で開かれたイベントだった。大柄な男性がイワナの塩焼きを参加者にふるまっていた。背が高く姿勢がいい。エプロン姿がカッコいい。

 そしてこのイワナが絶品だった。清流で育った川魚の滋味がギュッと詰まり、ほどよい塩気にほのかな甘みもある。ふくよかな食べ心地に魅せられてしまった。

 横山さんは東京に本社を置く大手アパレルメーカーで30年働いた後、川内村へと移住したと聞いた。世にサラリーマンからの転身者は山ほどいるだろうが、この人には何か私の参考になる物語がありそうだ。そんな直感を信じて、今年8月、村に横山さんを訪ねた。

夏はラグビーとゴルフ合宿

 青森出身。明治大学政経学部を卒業した横山さんが1983年に入社したのは、名門アパレルメーカーの三陽商会。私の世代では、長島茂雄さんが出演したスーツのCM、「Mr.Sanyo」が思い浮かぶが、やはり「バーバリー」の印象が強いだろう。そういえば、私も、父から譲り受けたお古の「バーバリーのコート」を着て就活をしたのを思い出す。

 三陽商会で横山さんは、営業マンとして、また社会人ラグビーの選手として充実した会社人生を送ってきた。

 「コートが主力の会社なので冬が忙しい。そのかわり夏は長い休みをとって、ラグビーとゴルフの合宿に参加して、メリハリつけて働けた。社員に優しい、いい会社でしたよ」

 だが、その人生航路に大きな変化が訪れる。50年以上親密な関係を築いてきたバーバリー社とのライセンス契約の終了が決まったのだ。

高齢になっても働くのが当たり前――。そんな時代の足音がひたひたと聞こえます。国全体を眺めても、人口減少による現役世代の激減を前に、政府は「一億総活躍」という言葉で高齢層を労働力に繰り入れようとしています。私たちの人生から「老後」という時間が消えていくのでしょうか。「老後レス時代」の生き方を考えます。

 このことが社内に知られるようになったのは2012年末ごろ。2年半後に、約1千億円の売り上げの半分を占める屋台骨のブランドを失うことになり、「社員数が多すぎるという認識が広がった。会社の雰囲気がどうなるか予想できた」と横山さんは振り返る。

 当時、二つのブランドを担当し…

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