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 国連のグテーレス事務総長が今月、「気候変動対策は、止められない」と題した記事を、朝日新聞などに寄せた。自身が開催を呼びかけ、先月、米ニューヨークで開かれた気候行動サミットについて、「世界にショックを与え、(気候変動対策で)幅広い行動を加速するように仕掛けた」と指摘。若者、国連、ビジネス、政府、市民社会のリーダーら多くの人々や組織が行動を起こし始めていると述べたうえで、「成功するにはほかにも多くの人が対策を取る必要がある」などと訴えている。

 この記事は、世界300以上のメディアが参加して気候変動の報道を強化する取り組み「Covering Climate Now」の一環として、参加メディアに向けて寄せられた。

「気候変動対策は、止められない」の全文は以下の通り

     ◇

アントニオ・グテーレス国連事務総長

 9月に開かれた国連気候行動サミットの直前、世界中の数百万の若者たちが街頭に出て、リーダーたちに訴えた。「あなたたちは私たちを見捨てている」と。彼らは正しい。

 世界の温室効果ガスの排出は増えている。気温は上がっている。海や森、気象パターン、生物多様性、食物生産、水、雇用、そして究極的には命にまで影響が差し迫っている。そして悪くなる一方だ。

 科学は否定できない。多くの場所では気候危機を知るのに図表は必要無い。窓の外を見るだけだ。

 気候の混乱(カオス)は米カリフォルニアからカリブの島々、アフリカから北極、それ以外の地域にまで広がっている。この問題の原因とはほど遠い人が、一番苦しんでいる。

 私はサイクロンの被害を受けたモザンビーク、ハリケーンに破壊されたバハマ、海面上昇に直面する南太平洋をこの目で見てきた。

世界は一緒に動き出した

 私がサミットを呼びかけたのは、パリ協定で定められた2020年の(削減目標の)締め切りを前に、正しい道をたどるためのきっかけにするためだ。そして各国や各産業の多くのリーダーが対策を引き上げた。

 政府や若者だけでなく、ビジネス、都市、投資家、市民社会などの幅広い連合体が、破滅的な気候を避けるために、一緒に動き出した。

 大排出国はまだだが、70カ国以上が50年までの実質排出ゼロを約束した。いくつかの大都市を含む、100以上の都市も同調した。少なくとも70カ国がパリ協定の元での国別目標を20年までに積み上げると表明した。

 小さな島国は30年までにカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロのこと)を実現し、100%再生エネルギーを達成すると約束した。

 パキスタンやグアテマラ、コロンビア、ナイジェリア、ニュージーランド、バルバドスに至るまで、110億本以上の植林をすると誓った。

 100以上の民間企業のリーダーがグリーン経済への移行を加速すると約束した。

 2兆ドル以上を動かす世界最大の投資家グループは、50年までにカーボンニュートラルになるような資産構成にすると約束した。

 これに加え、世界の半分近く、約34兆ドルの投資資産の運用者たちも、世界のリーダーに炭素排出に意味のある価格付けを行い、化石燃料への補助金と石炭火力発電所をやめるよう求めている。

 国際開発金融クラブ(IDFC)は20カ国の途上国でのクリーンエネルギー開発に、25年までに1兆ドルを投じると約束した。

 世界の銀行の3分の1がパリ協定の目標と持続可能な開発目標(SDGs)に沿ったビジネスをすると署名した。

大排出国が隠れる場所はない

 サミットは、都市や運輸業などの世界産業が、大規模な排出削減ができるとPRする場になった。森林保護の取り組みや水供給の保全も強調された。

 これらはすべて重要なステップだ。しかし十分ではない。

 サミットは世界にショックを与え、幅広い行動を加速するように仕掛けた。そして、厳しい真実を世界に知らしめ、リーダーとそうでない国を明らかにした。拒否する人や大排出国が隠れる場所はない。

 私は彼らに、自国でより多くの対策を取り、世界中でグリーン経済を進めることを求め続ける。

 我々の星は、真に地球規模の行動を求めている。一夜にしては実現できないし、この危機のほとんどの原因となっている国の、全面的な取り組みがなければできないことだ。

 もし、世界が気候のがけを避けるのなら、科学が忠告するよりもさらに多くが必要だ。30年までに温室効果ガスを45%削減、50年までの実質排出ゼロ、今世紀末までの気温上昇を1・5度までに抑えること。これが未来を救うための方法だ。

私たちの孫のために

 安くて環境にいい選択肢がすでにあるのに、多くの国が石炭に依存している。炭素の価格付けを発展させ、20年までに新規の石炭火力を確実になくす。納税者が一生懸命おさめた何兆ドルもの税金を、ハリケーンを巨大化させ、熱帯病を広め、紛争を激化させるような、死にゆく化石燃料産業に渡すのは終わらせる。

 同時に先進国は、途上国の排出削減と温暖被害への対応に、20年までに官民合わせて年間1千億ドルを拠出する約束を守らなければならない。

 12月にチリ・サンティアゴで始まる国連気候変動枠組み締約国会議(COP25)で、各国や企業、自治体が各自の目標を説明してくれると確信している。国連は取り組みの実現を一体となって支援する。

 気候変動は、我々の時代を決定づける問題だ。

 今のままで行けば、今世紀末に最低3度気温が上がると科学は言う。私はそのときいないが、私の孫がいる。

 私は彼らの住む唯一無二の地球を壊す共犯者になることを拒否する。

 若者、国連、ビジネスや金融、政府、市民社会のリーダー、つまり大多数が動き始め、行動を起こしている。しかし、成功するためには、ほかにも多くの人が温暖化対策を取る必要がある。

 先は長い。だが運動は始まった。