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 どこに行ってもスーパーや雑貨屋は閉まっていた。

 「どこも休みだよ。統一記念日だからね」。ホテルのフロントマンが教えてくれた。29年前の1990年10月3日は、東西ドイツが統一された日だ。

 ドイツ南西部の都市シュツットガルトで4日から開催中の体操世界選手権。演技を終えた選手を取材するミックスゾーンで、一人の女性が日本の報道陣に通訳を申し出てくれた。「私、日本語が分かります。何かあったら言ってください」

 学生ボランティアのハフマン・カルメンさん(19)。高校2年生の時、山梨・甲府東高校に留学したという。約10カ月という期間で、ここまで日本語が話せるのかと感心させられた。

 ドイツとはまったく違う言語や文化を学びたくて、日本への留学を決めたという。富士山に登って朝日を見たこと、ホストファミリーとの生活……。その中で、一番楽しい思い出は「球技大会でのキックベース」だった。

 「言葉が通じなくても、みんなで楽しめる。クラスの一員になれた感じがしたから」

 カルメンさんは特別体操に詳しいわけではない。それでも、今回のボランティアに応募したのは、「世界中のあちこちの人が来るから、参加したかった」。

 女子の団体予選があった4日は、北朝鮮と韓国が同じ班で演技をした。「北朝鮮も韓国も普段は話し合わなくても、体操で少し仲直りできればいいな。ドイツも昔は分かれていた。29年前、私はまだ生まれていないけど、両親から『ドイツが一緒になったときは感動した』って聞いたから」

 2020年東京五輪の海外ボランティアにも応募したが、抽選で外れたという。「本当に残念」と表情が曇った。

 将来の夢は「飛行機や機械を作ること」。来月からミュンヘンの工業大学へ通う。「大学院は日本に行きたいと思っています。技術がすごいから」。漢字を覚えるのが大好きという19歳から、スポーツの価値、五輪開催の意義を教えられた気がした。(山口史朗