外国ルーツの児童増加 では先生は?「現場の努力限界」
日本で働く外国人の増加にともない、全国の公立学校で、日本語の指導を必要とする子どもの数も急増している。文部科学省の昨年の調査では、全国に約5万1千人。この2年間で約7千人増えた。最前線の教室を記者が訪ねた。
児童の半数、外国ルーツ
大阪・ミナミの繁華街のど真ん中にある大阪市立南小学校(中央区)。全校児童約170人の半数が、外国にルーツをもつ。親の出身地はフィリピン、中国が大半で、学校周辺の飲食店で働く人が多い。
「これから、日本語の勉強を、はじめます!」
6月中旬、学校を訪ねると、5年生4人の大きな声が響いてきた。校舎2階に日本語教室がある。
このとき授業を受けていたのは、中国出身の3人とインドネシア出身の1人。学年は同じでも、来日時期によって日本語の習熟度は異なる。ひらがなの発音から、4年生レベルの漢字のつづり方まで、教室に専従する教諭2人が手づくりの教科書を使い、児童と向き合う。
4月に担当になった石井裕子教諭(52)は「一人ひとりにあわせた進め方をするのはすごく難しい。毎日ここで日本語指導に接してほしいけど、教師が足りなくて」。授業は45分。児童たちは週2、3回、国語の時間になると、自分のクラスを離れ、ここへ通う。
努力に限界、予算確保を
南小の日本語教室に通う児童は32人。教諭2人が個別指導の形で受け持てる限界ぎりぎりだ。だが、急な来日も多く、昨年度は年度途中に28人が編入してきた。日本語を話せない子を優先するため、押し出される形で、早めに教室を卒業せざるをえない子もいる。
平尾誠校長(57)は「現場の努力には限界がある。さらなる支援態勢や人の確保がどうしても必要だ」と訴える。
大阪市教育委員会は、南小のように日本語指導が必要な子が10人以上いる9校に、教師1人を追加で置く。日本語指導の必要な子は今年度、市立小中学校に818人おり、5年間で2・5倍に増えた。
市教委が日本語指導にあてる予算は、今年度は2220万円。4年間で3倍に増やした。担当職員は「現場の大変さは重く認識している。支援を広げるための予算を何とかとってきたい」と話す。
転入前に「初期教室」
大阪市教委が来年度に向けて検討を進めるのが、「初期教室」の設置だ。来日したての子どもが、学校への転入前に、日本語や学校生活の知識を集中的に学ぶ場所で、先進的な自治体が導入を始めている。
そうした自治体の一つ、今年4月に教室を開いた島根県出雲市を9月に訪ねた。
午前8時半。静まりかえった…