拡大する写真・図版葉っぱビジネスの町

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 徳島県の山深くに抱かれた上勝町。農家の一室でパソコンをにらむのは、西蔭幸代さん(82)。時計が、午前7時59分を回ると、その目が真剣さを増した。

 「ハスをねろうとる」。そうつぶやきながら、トラックボールに置いた手に自然と力が入った。画面には、全国各地から発注された「青もみじ」「ささ」など、日本料理に添えられる「つまもの」アイテムがずらりと並ぶ。

 午前8時、画面が更新され、「注文取り」が始まった。西蔭さんは、お目当ての「はすいも葉(小)30枚」のボタンにポインターをあてて、必死にクリックし続けた。だが、画面には無情にも「ざんねん!」の文字が――。町内の誰かが、一足早く誰かがこの注文を取ってしまったのだ。悔しそうな表情の西蔭さん。

 気を取り直して注文一覧を更新すると、また「はすの葉」の注文が新規に出ているのを見つけた。今度は、無事に受注に成功した。画面に表示された「受注おめでとう!」の文字に、西蔭さんは満面の笑みを浮かべた。

拡大する写真・図版ハスの葉を収穫する西蔭幸代さん

 さあ、今度は収穫だ。「注文とれたら、雨でも雪でもとりにいく!」と西蔭さん。小雨の降るなか、雨ガッパと長靴に身を固め、徒歩数分の畑に急いだ。生い茂るハスのなかを分け入り、首にかけた定規で葉を測って16~18センチのものだけを手早く30枚集めた。

 この葉は、1枚100円。1ケース30枚入りで3千円の売り上げになる。汚れのないことを確かめながら、きれいに箱詰めしていく。午後3時には農協に持ち込まなければならない。

高齢になっても働くのが当たり前――。そんな時代の足音がひたひたと聞こえます。国全体を眺めても、人口減少による現役世代の激減を前に、政府は「一億総活躍」という言葉で高齢層を労働力に繰り入れようとしています。私たちの人生から「老後」という時間が消えていくのでしょうか。「老後レス時代」の生き方を考えます。

 「葉っぱビジネス」として、全国に名を知られる上勝町を9月に訪ねた。この町から「彩(いろどり)」というブランド名で出荷された商品は首都圏にも空輸されている。当日午前に注文した商品は夜11時ごろには市場に届く。「つまもの界のアマゾン」とでも言うべきシステムで市場を席巻し、上勝町のシェアは全国7割にのぼるという。

 年間2億6千万円を売り上げるビジネスを支えているのは、158世帯の農協の「彩(いろどり)部会員」だ。なかには、売り上げが1千万円を超える農家も4~5戸ある。平均年齢70歳。主力は女性だ。

 過疎化と高齢化で活気を失った…

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