病名は肉腫「俺がなぜ」 闇夜をともしたブログの言葉
小林太一
スマホで同じ単語を検索するのが習慣になっていた。
「肉腫」
二つの文字を画面に打ち込むとき、男性(42)の脳裏にはいつも、医師の言葉が浮かんでいた。
「5年以内の生存率は50%」――。
右わきの下にできた5センチほどの脂肪の塊を、そう診断されたのは2017年5月だった。10万人に2人が発症する悪性腫瘍(しゅよう)の一種という。その日、どうやって自宅に帰ったのかは覚えていない。
都内の大学で教壇に立つ。経済学の博士号を取得したのは30歳を過ぎてから。37歳でようやく職を得て、研究だけでなく教えることにも魅力を感じるようになっていた。
その俺がなぜ。死にたくない。死にたくない。5回入院し、2度手術を受けた。成功はしたが、いつ再発してもおかしくなかった。夜、気づくと自室でひとり、泣いていた。
病状に関するサイトや、がん患者のブログを手当たり次第にあたった。ある日、吸い寄せられるように目にとまる文字があった。
〈明日死んでもよし、百まで…