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 大型で非常に強い台風19号の接近を受け、茨城県内の自治体は11日、避難所の準備などの対応に追われた。公共交通機関や商業施設は最接近する12日の運休や休業を決定するなど市民生活にも影響が予想される。前回の台風15号で農業施設などに大きな被害が出た鹿行地域では不安を訴える声も出ている。

 水戸地方気象台によると、台風は12日夕方から夜遅くにかけて県に接近する見込み。13日午後6時までの24時間雨量は県全域で最大100~200ミリ、12日午後9時~13日午前0時の最大瞬間風速は陸上で35メートル、海上で50メートルに達する見込み。沿岸部は高波や高潮を受ける可能性がある。担当者は「前回の台風15号以上の風害の恐れがある」として、最新の情報の確認を呼びかけている。

 県防災・危機管理課などによると、11日午後5時までに県南の3市町が、住民に向け、避難準備情報を出した。対象は、稲敷市が1万5960世帯の4万4082人、阿見町が206世帯の569人、利根町が7080世帯の1万6127人。

 自主避難者のために、11日午後6時現在で12市町(日立市、笠間市、鹿島氏、稲敷市、かすみがうら市、鉾田市、つくばみらい市、小美玉市、茨城町、大子町、阿見町、利根町)が計56カ所の避難所を開設。県は英語や中国語など5カ国語に対応した「県防災・危機ポータルサイト」(https://www.bousai.ibaraki.jp別ウインドウで開きます)で県内市町村の避難情報などを発信している。

 交通機関では、JR東日本が12日の常磐線の特急「ひたち」と「ときわ」を始発から全区間で運休。普通列車も常磐線、水戸線、水郡線、鹿島線、宇都宮線が正午前後から運転を取りやめる。つくばエクスプレス(TX)、鹿島臨海鉄道、関東鉄道、ひたちなか海浜鉄道、真岡鉄道もお昼ごろに運休の予定。

 量販店では防災用品を買い求め、多くの人が訪れた。鉾田市のホームセンター「山新鉾田店」では、10日から品薄状態が続き、11日には養生テープや懐中電灯がほぼ完売となった。つくば市内の量販店の担当者は「商品が入り次第、なくなるという状況」と話す。

 県内に101店舗あるスーパー「カスミ」(つくば市)は12日、つくば市内の3店舗を終日休業し、それ以外の全店舗を午後5時閉店とする。日立市と龍ケ崎市にあるイトーヨーカドーも12日は臨時休業。「セイブ」(水戸市)は12日の営業時間を短縮し、全店ともに午後7時に閉店する。

 水戸や下妻などにある県内四つのイオンモールも12日は休業する。水戸市の京成百貨店や水戸駅ビルエクセルのほか、ホームセンター「ジョイフル本田」(土浦市)も県内4店舗を臨時休業するという。

 9月上旬の台風15号で、農業施設や住宅に大きな被害を出した鹿行地区。ビニールハウス15棟でピーマンなどを作っている鉾田市大竹の農業平沼喜広さん(64)は、約半分に当たる7棟でビニールが吹き飛ばされるなどの被害を受けた。

 本来は11月いっぱいまで続く出荷はできなくなった。壊れたハウスからビニールをはがす人手も足りない。「被害がありませんように、と祈るしかない。こんなにしょっちゅう台風が来ると本当に参る」とため息をついた。

 水戸市では、大雨による河川の増水に備え、同市見川町の市土木補修事務所に職員が集まり、土囊(どのう)作りを進めた。自宅の敷地内に雨水が流れ込むのを防ぐために使ってもらおうと、自動車で訪れた市民には、無償で土囊を配った。(村山恵二)

 全国障害者スポーツ大会出場のため茨城入りしていた各都道府県、政令指定都市の選手団は11日、台風による大会中止を受けて急きょ設定された臨時特急などで茨城を後にした。

 「必死になって夜通しで帰りのチケットを確保しました」と苦笑いを見せたのは京都市団長の内山修さん(61)。同市代表で出場予定だった服部竜生さん(17)は、陸上の50メートル走など3種目に出場予定だった。6月からの強化練習では、炎天下や雨の中走り込んだ。「本当は大会で走りたかったけれど、宿舎の近くで海を見ながら走れて楽しかった」

 静岡県代表として初出場の予定だった卓球の岩間晴己さん(15)は筋ジストロフィーで車いす生活を送る。中1から卓球を始め、メダルを目指して週5回の練習に励んできた。「強い相手と戦うのが楽しみだったのでがっかり。無理にでもやってほしかった」

 沖縄県代表のバスケットボール主将の浜比嘉奈美さん(20)は10日午後5時ごろ、飛行機を降りた直後に大会中止を知った。にぎやかに話していたのが、皆一瞬で無言になった。「ショックだけど、台風には勝てないからしょうがない」と肩を落とした。

 「中止決定が遅すぎる」と憤るのは鳥取県陸上コーチの上田祐吉さん(61)。「車いすや知的障害者など誰かの助けがないと避難できない選手も多い。健常者の大会以上に早めに判断がいる。教訓を来年の東京パラリンピックに生かしてほしい」と話す。

 初の地元開催を待ち望んでいた茨城の選手たちも、中止に肩を落とした。茨城県立水戸飯富特別支援学校(水戸市)では2人の選手が出場予定だった。サッカーに出場予定だった飯塚翔さん(16)は、「選ばれたからには絶対勝つ、その思いで練習してきた。地元で全力を出し切り、優勝したかった」。8月に自己ベストを更新したばかりという陸上立ち幅跳びの室橋力輝(りき)さん(17)は「優勝して、家族のもとに金メダルを持ち帰りたかった」と言葉を絞り出した。

 各地の選手団が宿泊予定だった県内のホテルではキャンセルが相次いだ。水戸市の「水戸京成ホテル」では、四つの選手団が10日から5泊6日で滞在する予定だったが、全員が11日に帰路についた。日立市の「ホテルテラスザスクエア日立」も3団体からキャンセルがあった。担当者は「満室のはずが、今はガラガラ。仕方ないけれど、ホテルとしては大打撃です」と話した。

 県国体・障害者スポーツ大会局によると、選手団や関係者向けに6日間で延べ約2千台の大型バスを予約していたが、全て取りやめになったという。(佐々木凌、佐野楓)