[PR]

 ドイツのシュツットガルトで開かれている体操の世界選手権で、台湾の躍進がめざましい。男子団体では昨年の17位から6位に入り、1964年東京大会以来となる五輪出場権を獲得。同種目別あん馬ではエース李智凱が銀メダル。導いたのは、長く海外で選手を育ててきた日本人の総監督だ。

 「倒立の角度が悪い」「着地に余裕がない。減点だ」。11日の男子個人総合を、台湾の浜田貞雄総監督(72)と一緒に観戦し、解説してもらった。「13・1くらい」と、ある選手の得点を予想。直後、ビジョンに「13・100」と映し出された。

 李のあん馬の演技を見ながら、「最初はあんなにきれいじゃなかったんだよ」。長い手足を生かした雄大な開脚旋回。2016年に総監督になってから股関節の柔軟性、旋回で使う筋力の強化など、「基礎から徹底してたたき込んだ。毎日毎日、旋回の練習をやらせた」。李は翌日の種目別決勝のあん馬で15・433点を出し、2位に入った。

 団体では昨年から12点近く得点を伸ばした。決勝の得点は248・243点で日本より10点近く低いが、特筆すべきは演技の美しさを示すE得点。日本を1点以上上回り、ロシア、中国に次いで3番目に高い。

 「日本より美しい」と評価された台湾の体操。秘密は浜田さんの経歴に隠されている。

 69年に日体大を卒業。故郷の高知県で教員になるつもりが、定員がいっぱいで入れないと分かると、米国に渡った。ケント州立大の大学院で運動力学や解剖学を学び、71年にスタンフォード大の求人に応募し、合格。翌年から体操部を指導し、20年後の92年には全米王者に導いた。

 55歳で大学を退いた後、08年から数年間、オランダを指導。12年ロンドン五輪の鉄棒金メダリストで「鉄棒の神」と呼ばれるゾンダーランドも教えた。

 指導には運動力学などの知識を応用する。「あん馬なら旋回に必要な脇腹付近の筋力、ゆかや跳馬は脚力の強化。技術より、まずそこから徹底してやらせた」とにやり。李はあん馬で16年リオデジャネイロ五輪の31位から躍進した。

 総監督の就任時にノートに書いた計画は「2020年東京五輪で金メダル」。李や、鉄棒のスペシャリスト唐嘉鴻ら、種目別で世界一を狙える実力者がいる。「来年はもっと演技難度を上げる。秘策はあるよ」。不敵に笑った。(山口史朗