【動画】宮城県丸森町では、住民がつり上げられて救助された=海上保安庁提供、窪小谷菜月撮影
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 阿武隈川の氾濫(はんらん)で、町中心部が被害を受けた宮城県丸森町。役場に向かう陸上自衛隊のボートに、朝日新聞の記者が同乗した。

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 まるで茶色くにごった湖の中を進んでいるようだ。木の板やゴミ箱と思われる水色のプラスチックが横を流れ、「止まれ」の標識や薬局の看板と同じ高さを進む。いかに水が深いか。

 住宅の1階部分は水没し、もともと平屋建てが並んでいるようにみえる。シルバーセンターもドラッグストアも入り口と思われるところは分かるが、建物の中ほどまで水が入り込んでいる。

 役場は、湖の中に浮いた島のように取り残されている。駐車場の車は屋根が見えるだけだ。

 避難者たちが異様な光景を前に立ち尽くしていた。

 丸森町の男性(78)は12日午後4時ごろ、雨が激しくなったので軽乗用車で役場に避難してきた。初めは役場横の事務所にいたが、午後8時ごろ、このままでは危ないとなり、職員らと一緒に本庁舎に避難した。避難してきた人から、自宅の周辺は1階まで浸水していると聞いた。「一晩避難所で明かせば大丈夫とおもったが、こんなことになるなんて。早く家に帰りたいが、身動きがとれない。車も家ももうだめだ。助けて」

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 町中心部で商店を経営する船山俊さん(86)によると、12日夜に自宅兼店舗の脇の側溝が裏山の土砂で詰まり、泥水が店の1階に流れ込んだ。急いで商品を上にあげたが、水につかってだめになったという。「ガンガン水が流れて、夜は怖くて眠れなかった。雨と風がすごかった」

 丸森町消防団丸森分団の佐藤隆副団長(66)によると、被害にそなえた準備は12日午前からしていたという。午後5時ごろには、救助要請が町を通じてあったが、日が暮れてからの救出は危険なため、体が不自由な人など緊急性の高い要請以外は、夜明けまで待ってもらった。

 13日朝には電話が不通に。阿武隈川の氾濫で、ボートを使わないと安否確認もできない状態になったという。

 12日午後2時ごろから排水作業に取り組んでいるが、ポンプ車3台のうち2台が故障し、稼働しているのは1台のみ。「1カ月かかっても水は引かない」と話す。「ここまでとは想定していなかった。被害が大きすぎる。通信もズタズタで、ここまでの被害は初めてだ」(窪小谷菜月、山本逸生)