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(13日、プロ野球CS最終ステージ 巨人4―1阪神)

 4万5931人の観衆がどよめいた。同点の六回、巨人の攻撃。2死三塁から、打席の丸は構えていたバットを阪神・西の投球と同時にグラウンドと平行にする。セーフティーバントだ。「(三塁の)大山選手が少し下がっているのが見えた。捕らせるバントができればヒットになると思った」。丸が狙いを明かす。

 ボールは三塁側に転がる。意表を突かれた西は慌ててマウンドを降りて処理しようとする。しかし、三塁走者は本塁へ迫っており、間に合わない。体勢を崩しながらの一塁送球もそれ、丸もセーフに(記録は安打)。次の瞬間、西は仰向けに倒れ、起き上がろうとしても両ひざをついたまま、しばらくへたり込んでいた。

 足と小技と瞬時の判断力でもぎ取った1点。原監督は「サインではありません。丸自身が、一番確率が高いのを選んだ」と話すが、今季の巨人は豪快に打つだけではなく、総合力の高い攻撃をときとして展開する。第2戦の五回も亀井と坂本勇が重盗を成功させ、追加点へとつなげた。

 4番の岡本は、この試合も五回に同点ソロを放つなど4試合で計3本塁打と活躍。波に乗っていた阪神を破っての日本シリーズに、原監督は「勢いは脅威だった。勝つことができたのは非常に価値がある」。チームとしても、リーグとしても2012年以来遠ざかる日本一という最終目標へのスタートラインに立った。(山下弘展)

阪神、終幕 打線がつながらず

 ついに力尽きた。

 阪神は手負いのエース西が踏ん張った。5日のDeNA戦で打球を受けて左足親指の爪を負傷し、1死も取れずに交代していた。

 「若い投手や中継ぎに迷惑をかけた。恩返しできるように」と意気込んだマウンド。言葉通り、三回まで一人の走者も出さない。五回に岡本に一発を浴び、六回には勝ち越しを許したが、6回2失点の粘投。CS7試合に登板した先発陣で唯一、五回以上を投げた。

 だが、シーズンを通して課題だった打線が西を援護できなかった。

 三回1死一、二塁で福留、マルテが凡退。六回には2四球で無死一、二塁と絶好の勝ち越し機を作った。だが、マルテは三ゴロ。大山、梅野が連続三振と走者を進めることすらできなかった。西が力尽きたのは、その直後だった。

 試合後、矢野監督は「気持ちを出して、あきらめない姿勢を見せてくれた」と選手をねぎらった。シーズン最終盤、1敗もできない状況から奇跡的な6連勝でCSに進出。第1SでもDeNAに競り勝った粘りは見事だった。

 ただ、総得点で12球団最少の打線は、短期決戦でも迫力を欠いた。本塁打数は巨人の7本に対し、阪神は2本。4番のマルテは打点もゼロに終わった。指揮官は「課題はたくさんある」とも言った。この経験を来季どう生かすかは、選手次第だ。(辻隆徳)

     ◇

 原監督(巨) 「短期決戦に臨めるのは幸せなチーム。日本シリーズもはつらつ、のびのびと戦ってほしい」

 岡本(巨) 五回の同点弾を含め、CSは3本塁打で最優秀選手に選ばれる。「チームのためにと第一に思ってやってきた。勝ったことがすごくうれしい」

 高橋(巨) 新人左腕は六回途中1失点と好投。「こういう試合で粘れたのは良かったが、六回は投げきらないと」

 西(神) 6回2失点の好投も実らず。「絶対に負けられない中で、先制されないように一球一球投げた。(勝ち越しを許した場面は)自分のミスです」

 近本(神) 五回に四球で出るも盗塁失敗。チームを引っ張った新人は無安打に終わる。「(1年で)得たものはいっぱいありますけど、それ(を整理するの)は落ち着いてから」

 鳥谷(神) 九回2死から代打で二ゴロ。今季限りで退団するため、阪神での最後の試合に。「16年間はあっという間。いろんな人の支えがあってここまで来られた」