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 台風19号により、多くの人々が避難所など慣れない環境での生活を余儀なくされています。健康を保つために、できることは? 専門家に聞きました。

 横浜在宅看護協議会会長で訪問看護師の栗原美穂子さんがポイントにあげるのは、睡眠だ。避難所では床に寝る場合が多いので、なかなか眠れないことが多い。だが、アイマスクや耳栓をするだけで、随分違うという。「耳栓がなければイヤホン、それもなければティッシュをちぎって丸めたものを耳に詰めるといいです」と助言する。

 あとはこまめに手を洗うこと。風邪やインフルエンザなどは、手から感染することが多い。水道が止まっていたら、ウェットティッシュで拭く。「乾いたティッシュで手を拭くだけでも、衛生上の効果はあるんですよ」

 また、じっとしていないで、少しでも体を動かすことが重要になる。例えば、トイレに並んでいるときに、足踏みをしたり、背伸びをしたりする、といった方法だ。

 夜中にトイレに行くのがいやな男性は、店などにある傘袋やレジ袋にする方法もあるという。口を縛っておいて、翌朝トイレに流せばいい。

 栗原さんは「寒暖差が大きい季節になってきたので、保温対策が大事。靴下ははくようにして、タオルを首に巻くだけでも違う」と話している。

 避難所の管理者向けには、医療関係の団体でつくる一般社団法人「医療安全全国共同行動」がまとめる「避難所健康維持チェックリスト」(http://qsh.jp/saigai_doc/hinanjyo_kenkouiji.pdf別ウインドウで開きます)がある。東日本大震災時にまとめたものだが、乳幼児、高齢者、脳卒中、心臓病など、年代・疾病別の対処のポイントは参考になる。例えば、脳卒中では「突然の激しい頭痛」「口の片側からよだれが出る」などの症状が出たら救急車を呼ぶ、などと記されている。発達障害児・者向けの対応法も紹介されている。

唾液で口内をきれいに

 避難所で歯ブラシがなかったり、断水していたりする場合、歯磨きはどうしたらよいのか。

 日本歯科医師会によると、歯ブラシがない場合は「食後に少量の水やお茶でブクブクうがいをする」「ハンカチやティッシュで汚れをとる」などの方法がある。

 東日本大震災の被災地支援を続け、高齢者歯科が専門の飯田良平・鶴見大学歯学部非常勤講師は「ティッシュなどを水でぬらしてもいいが、ぬらさなくても細菌の増殖を抑える効果はある」と話す。

 「耳の下やあごの下を手でもみ、唾液(だえき)を出しやすくする」ことも効果的だ。唾液は口の中をきれいに保つ働きがあるからだ。「よくかんで食べる」だけでも唾液が出てよいのだという。

 慣れない避難生活のストレスで抵抗力が弱まって、虫歯などは悪化しやすい。口の健康は、体全体の健康に影響する。

 「特に要介護の高齢者は、(口の中の汚れが原因で細菌が肺に入る)誤嚥(ごえん)性肺炎になりやすいので要注意」と飯田さん。こまめにティッシュなどでぬぐうことを勧める。

 日本歯科医師会は避難所掲示用のポスター(https://www.jda.or.jp/park/disaster/poster.html#1別ウインドウで開きます)を作成している。動画でも「日本歯科医師会 災害時の歯みがき方法」と題して、ユーチューブで見られる。

 飯田さんによると、水のいらない歯磨きシートや、専門的な口腔(こうくう)ケアのティッシュが販売されているという。「これだけ災害がいつ起きてもおかしくない世の中なので、これからはそうしたものを持ち歩いた方がいいかもしれない」と話している。

気持ちを書き出し心落ち着けて

 避難所ではプライバシー確保が難しかったり、仕事や生活への不安が高まったり、メンタル的にも落ち込みやすい。自分でできる「心のケア法」について、メンタルヘルスに詳しい渡部卓・帝京平成大学現代ライフ学部教授に聞いた。

 まず、「その日あったこと、気持ちなどを書き出す」こと。手帳があればいいし、なければスマホなどに入力するのでもいい。「気持ちを吐き出すだけで意味がある。書き出すだけで、少し落ち着き、冷静になれる効果はある」と渡部さん。自分自身を客観視でき、気持ちが少し楽になるのだという。

 また「腹式呼吸」をするのもいい。目を閉じて、鼻からゆっくり吸って、閉じた口の隙間からゆっくり吐いていく。吐くときに「身体の中の疲れ、モヤモヤ、イライラが少しずつ外に出ていく」とイメージするといい。

 手軽にできる方法としては、スマホや携帯の待ち受け画面を、リラックスできる風景などに変えるのも手だという。「例えば森林の写真を待ち受けにするだけで、気晴らしになると思う」と助言する。(佐藤陽)

佐藤陽

佐藤陽(さとう・よう) 朝日新聞Reライフプロジェクト室主査

朝日新聞Reライフプロジェクト主査。横浜総局記者時代に、神奈川の超高齢化の実態や取り組みを描いた「迫る2025ショック」を2年半連載した。6月20日に「日本で老いて死ぬということ」(朝日新聞出版)として発売される。早稲田大学非常勤講師。