[PR]

 台風19号による千曲(ちくま)川の堤防決壊で、長野県産リンゴの有数の産地は一帯が泥水につかった。収穫を控えたリンゴの多くが出荷できなくなり、農機具も被害を受けた。自宅の後片付けに追われる農家には「産地が消えてしまうのでは」と不安がよぎる。

 「1年かけて育ててきたのに……」。リンゴ農家の西沢穂孝(ほたか)さん(38)=長野市赤沼=が泥だらけのリンゴを前に話した。100年以上続く「やまだい農園」の4代目。約1・5ヘクタールのリンゴ畑で、農薬にあまり頼らない栽培にこだわり、毎年約45トンを出荷してきた。

 全体の7割を占める「サンふじ」が、もうすぐ収穫期だった。そんなリンゴを濁流が襲った。畑の木々には、2メートルを超す高さにまで泥が押し寄せた痕跡が残る。収穫などで使う高所作業車や肥料を散布する機械なども使えなくなった。まだ自宅の後片付けで手いっぱいで、畑の様子の確認もできていない。

 堤防決壊現場の近くで1ヘクタールのリンゴ畑を営む土屋剛志さん(51)=同市穂保(ほやす)=は「台風と言えば風の被害。水のことはまったく警戒していなかった」と振り返った。畑の土からは油の臭いが漂い、割れたガラスも混じる。14日に農園の様子を見に行くと、隣接する直売所は浸水し、めちゃくちゃになっていた。収穫したリンゴを積んだコンテナや、農作業に使うリヤカーはどこかに流されてしまった。「まずはごみ拾いから。そこから先はまだ考えられない」

 県によると、この地域では1900年ごろからリンゴ栽培が始まった。かつて養蚕が盛んで桑畑が並んでいたが、度重なる水害に悩まされた。そこで、多少の水につかっても翌年には実をつけるリンゴに植え替える農家が出てきたのだという。寒暖の差もあって、糖度が高いのが売りになった。いまや「アップルライン」と呼ばれる国道の周辺には、約150ヘクタールのリンゴ畑が広がり、直売所も並ぶ。

 リンゴの木々に囲まれ育った西…

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら