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 台風19号で被害が出た岩手県山田町。浸水被害が集中した田の浜地区では、東日本大震災後に町が整備した堤防が雨水をせき止め、被害が広がった可能性が指摘されている。町は原因を調査をしているが、自宅を被災した住民からは「災害ではなく人災だ」との声も上がる。

 田の浜地区では被災した自宅を片付ける人たちの姿が見られた。「腰もひざも痛い。それでもここに住むには頑張るしかない」。糠盛(ぬかもり)浩子さん(84)は泥にまみれた堤防沿いの家の柱を拭いていた。自宅は1階部分が浸水。震災後、仮設住宅で5年間過ごし、やっと手に入れた自宅だったが、再び仮設暮らしとなった。「十分に疲れもとれない。この生活をいつまで続けられるか……」

 台風19号で田の浜地区は55棟が床上浸水、31棟が床下浸水した。山田町全体の45%を占める被害が出た原因として、住民などが指摘するのが震災後に町が整備した堤防だ。県が建設中の防潮堤(標高12・8メートル)と住宅地との間に「第二の堤防」として作られ、2018年5月に完成した。

 12日夜から13日朝にかけての豪雨で、山側から流れてきた水がたまり、一時は堤防の高さ(3・3メートル)近くまで達した。13日朝には堤防の一部が決壊したことで水が引いたという。

 町建設課によると、堤防には3カ所の排水管があり、うち一番低地にある中央部分の1カ所が土砂がつまり、海側に雨水が流れなかった。この排水管は過去の降水データや地形を考慮し、1時間あたり最大55・7ミリの雨を想定して設置されたが、今回の台風では1時間あたり最大77・5ミリの雨が降った。

 田の浜地区は周囲を山に囲まれていて、住宅地に水が集まりやすい。岩手大の福留邦洋教授(地域防災学)は「用水路や側溝の排水能力を上回る水が流入した可能性が高い」と指摘する。また、町が作成したハザードマップによると、地区の広い範囲が土砂災害警戒区域に指定されていて、土砂も流れ込んだ。岩手大の井良沢道也教授(砂防学)は「(排水管は)つまるべくしてつまった」と分析する。

 「人災だ」。田の浜地区に住む…

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