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台風19号支援通信

 認知症の人は災害時の避難所で混乱しやすく、心身の状態が悪くなりがちで、支える家族の疲弊も想像以上だ。専門家は、周囲のちょっとした配慮が大切だと指摘している。

 認知症介護研究・研修東京センターは東日本大震災の後、「避難所でがんばっている認知症の人・家族等への支援ガイド」をまとめている(表)。同センターの永田久美子研究部長は、緊迫した状況の時ほど、あえて「ひと呼吸」いれ、表情をゆるめて本人に接してほしいとアドバイスする。「周囲がぴりぴりして怖い顔をしていると、それだけで本人は落ち着かなくなります」

 見落とされがちなのが、本人への情報提供。認知症の人は記憶力や判断力が低下していることで、不安が膨らみがちだ。「蚊帳の外」に置かれれば不安や混乱が強まるばかりなので、「ここは○○体育館だよ」「食べ物が○時ごろ、配られるよ」など、わかりやすく状況を伝えることが必要だと永田さんは言う。

 動き回る、声を出すなど落ち着きを失ったときはどうするか。周囲を気にして、無理やり抑えようとするのは逆効果だ。永田さんは「本人なりにストレスと闘っています。そっと本人の話を聞き、そばに味方がいる、だいじょうぶだよ、と安心してもらうことが肝心。ストレスを発散できるよう、一緒に歩くなどの気晴らしを」と話す。

 ちょっと目を離したすきに避難所から行方不明になったケースもあるという。家族や介護職員のトイレや飲食、仮眠などをとるときは、短時間でも見守りを交代するなどの周囲の心配りが求められる。万が一に備え、連絡先や住所などを明記したメモ、カードなどを本人に身につけておいてもらうなどの対応も必要だ。

 一方で、本人がまだできることを奪ってしまうような支援のあり方も要注意だと永田さんは言う。「災害時には周囲の口出し手出しが増え、自分ですることが何もなくなり、避難所生活で心と体の状態が大きく低下してしまう例があります」。何かを配る、片づけるなど、できそうなことは本人にどんどん手伝ってもらうことも心がけたい。

 上記の「支援ガイド」は、認知症介護情報ネットワークのウェブサイト(https://www.dcnet.gr.jp/earthquake/別ウインドウで開きます)に掲載されている。

避難所における認知症の人・家族への支援のポイント

○ざわめき・雑音のストレスから守る工夫を

 ・出入り口から離れた所など、できるだけ雑音の少ない場所を確保。難しい場合、本人の座る向きを出入り口と反対の方にするなどの工夫を

○ペースを落として、ゆったりと接する

 ・あわただしい雰囲気や口調は本人を混乱させる。緊迫した状況でもひと呼吸いれ、焦らず、ゆったりとした言葉かけを

○本人に情報を

 ・記憶や判断力が低下して会話が難しい状態だとしても、状況をできるだけわかりやすく伝える。本人なりに不安を感じており、説明がないと混乱が強まる

○少しでも「心地よい刺激」を

 ・手足・首筋・腰などを温める、手のひらで体をさするなどで、落ち着くことがある。やわらかいタオル・毛布などを渡す工夫も

○落ち着かない時、説得したり、態度や言葉で抑えようとしたりするのは逆効果

 ・本人の要望に応じられなくても否定せず、まずは要望を親身に聞くこと。関わる人が落ち着いていると本人も落ち着く

○家族や介護職員が解放される時間の確保を

 ・本人から目が離せず周囲に気を使っている家族らは想像以上に消耗する。トイレや飲食時の際に安心して本人のそばを離れられるよう、周囲の支えが必要

※「避難所でがんばっている認知症の人・家族等への支援ガイド」をもとに作成