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 台風19号は、千曲川の決壊現場だけでなく県内各地に大きな爪痕を残した。支流を含め計6カ所の川で決壊。大雨による濁流は、3人の命を奪ったうえ、道路を崩落させ、9千棟を超える家をのみ込んだ。台風上陸から19日で1週間。いまだ900人以上が避難生活を続けており、被災者の不安は尽きない。

支流氾濫 橋流され市道崩落 佐久

 千曲川本流だけでなく、支流域でも氾濫(はんらん)や道路の崩落などが相次いだ。

 「大きな石や流木がドーン、ドーンと川岸にぶつかってね。生きた心地がしなかったよ」

 佐久市の山あいにある入沢地区。12日夜から集落を流れる谷川(やがわ)が増水し、横山親子(ちかこ)さん(76)は夫の正希(まさき)さん(83)と眠れない夜を過ごした。

 谷川はふだんは水深1メートル余りの静かな川。その水かさがみるみる3~4メートルに増し、激流となった。川岸をえぐり、脇を走る市道が約2キロにわたって至るところで崩落。20カ所近くあった私設の橋はほとんどが流され、下流では床上浸水も出た。横山さんは「嫁に来て五十数年になるけれど、こんな谷川は見たことがない」。

 佐久市街地にほど近い杉ノ木地区。12日夕、近くを流れる滑津(なめづ)川左岸の堤防が約300メートルにわたって決壊し、住宅地に水があふれ出した。

 午後5時過ぎ、工藤輝子さん(60)が家を出ようとしたところ、家の前を走る市道の先300メートルほどのところに津波のようなものが見えた。あっという間に押し寄せ、高さ約1メートルの石垣を超えた。廊下まで水が入り、風呂の栓から泥水が逆流。夜10時ごろにようやく引き始めたという。

 滑津川はすぐ下流で千曲川に合流する。工藤さんは「千曲川の増水で、行き場を失った水があふれたのかな。ここに30年以上住んでいて、川が怖いなんて思ったことなかった」。工藤さん宅は床下浸水だったが、同地区では16戸に床上浸水の被害が出た。(土屋弘)

鉄道運休 通学・観光に打撃 東御

 東御市では、しなの鉄道をまたぐ陸橋が千曲川の濁流に基礎部分をえぐられて崩壊。橋の残存部分が崩落する危険があり、田中―上田駅間で運休が続く。

 この区間を最も利用するのは、高校生たちだ。

 東御市のお隣、小諸市の小諸高校音楽科には遠方の生徒も通う。その一人、長野市から通う1年の斎藤正希さん(16)は、17日の学校再開後は朝6時に家を出る。上田までは電車、上田から田中までバス、田中から再び電車。ところが田中から先も間引き運転となっっているため、利用できるのは午前10時42分発だけ。「学校に着くのが午前11時半。授業後、家に帰り着くのは夜9時半です」

 千曲市から通う3年の山村もえさん(17)も、田中からは同じ電車で通学する。「家は被災しませんでしたが、通学は大変です」

 しなの鉄道によると、復旧は未定。「県が河川の応急工事を終えるまでに3、4週間。こちらが工事に入るのはそのあとなので、運行再開まで1カ月ほどかかりそう」と話す。

 崩壊した陸橋が向かう先は、伝統的建造物群で知られる観光地、海野宿だ。小型車用の駐車場も流されたため、観光客は激減。がらんとしたありさまに、近所の人は「金曜日にはいつもいっぱい観光客が来るんだよ」と驚いていた。(依光隆明)

保育園水没 復旧作業続く 千曲

 2千棟を超える住宅の浸水被害が出た千曲市。県内では長野市に次ぐ被害の多さだ。避難者も一時、2千人を超えた。

 保育園も被害を受けた。千曲川支流が氾濫し、川沿いにある平屋建ての市立雨宮保育園はほぼ水没。園内の電気製品は「全滅」した。園児32人は別の保育園に移り、この日も他の保育園からの応援を受け、片付けが続いた。園児が描いた絵などの作品はすべて捨てることになりそうだ。園長は「捨てるたびに思い入れもあって忍びない」。

 同市保育課によると、杭瀬下保育園も床上浸水の被害があり、154人の園児が他の保育園に移った。両園の再開のめどは立っていない。

 千曲川沿いの戸倉上山田温泉でも一部地区で床上浸水の被害があった。「旅館などの営業には問題なかった」(信州千曲観光局)といい、20日まで約20施設で被災した市民やボランティアに風呂を無料開放している。(佐藤靖)

週末へ活気戻る 軽井沢

 国内有数の観光地・長野県軽井沢町。一時は客足が落ち込んだが、週末に向け活気を取り戻している。

 17日昼、飲食店が立ち並ぶ「旧軽井沢銀座通り」は観光客でにぎわった。東京都板橋区の大学2年、工藤魁斗さん(20)はサークル仲間と訪れた。「宿を取っていたし、来た。平日なのにこんなに人がいて、さすが軽井沢だと思った」

 台風の影響で多くの地区が停電したが、通りの店は13日には営業を再開した。

 紅茶専門店「サンビーム」は、一時売り上げが通常の10分の1まで落ちたが「ツアーのお客さんもよく見る。平常に戻りつつある」と、店を営む斎藤泰代さん(58)。創業120年以上の「万平ホテル」は、11~15日に約200組のキャンセルが入ったが、この週末は8割以上が埋まり、天皇陛下の即位の礼で祝前日となる21日はほぼ満室になった。西川真司支配人(58)は「何も変わらず安全。心配なさらず来てほしい」と話す。(横川結香)