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 敗れた日本の選手たちが最後の円陣を組んだ。「下を向く必要はない。胸を張ろう」。主将のリーチ・マイケルが語りかける。選手は涙にくれた。温かい声援が彼らを包み込んだ。

 4年前のW杯、1次リーグで南アを相手に日本は「スポーツ史上最大の番狂わせ」と呼ばれる34―32の逆転勝利を演じた。その後、リーチは何人かの相手選手から「油断があった」「日本戦の次を考えていた」と打ち明けられた。今回は違う。負ければ終わりの決勝トーナメント。日本が「本気」の強豪・南アに挑み、後半途中まで接戦を演じた。

 開始早々にトライを許したが、その後は流れを引き寄せた。前半は、ほぼ日本のペース。そこに4年間の進歩があった。

 ボールキープだけではなく、機を見てキックで敵陣へと仕掛けた。タックルを受けながら、リスク覚悟でパスをつなぎ、前進した。

 エディ・ジョーンズ前ヘッドコーチ(HC)時代は認められなかった「攻め」のプレー。それを状況に応じて使いこなす「スピーディーでスマートな(賢い)ラグビー」をジェイミー・ジョセフHCは求め、体と頭が疲れた状態で実戦練習を重ねてきた。W杯3大会連続出場の堀江翔太は「頭を使う難しいラグビー。ものにできれば勝てると信じて取り組んだ」と振り返る。判断力や自主性を重視するジョセフHCの下、選手は自発的に練習の映像を見返し、反省や準備をするようになった。その姿にジョセフHCは「成長を感じる」と目を細める。

 準々決勝を前に、ジョセフHCは「全員でディテール(細部)にこだわれ」と選手たちに念押しした。密集戦で一歩でも前に出る。そこから一秒でも早くパスを出す。それも4年間をかけて追求してきたことだ。稲垣啓太は「ディテールにこだわり、プレーの精度が上がっている」と語る。

 ただ、初めて経験するW杯の5試合目。後半の疲労は想像以上だった。南アに許した連続トライは、いずれも日本が敵陣に入りながら、そこからボールを運ばれたもの。力と速さに屈した。

 「南アが100%の力をぶつけてきて、日本は対応できなかった」とリーチ。決勝トーナメントという未知の領域に足を踏み入れ、勝負の厳しさを知った。この経験はきっと成長につながる。(能田英二)