【動画】あなたは生理「隠す派」?「隠さない派」?=半田尚子撮影
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 生理用品を買うと、店員さんが中身が見えない袋に入れてくれる。何げない光景だが、そもそも生理って隠すもの? 隠さなくていいもの? 身近な困りごとや疑問を募って取材する「#ニュース4U」取材班が最新の生理事情を追った。

コンビニ包装「業界の慣例」

 9月下旬、取材班の女性記者(30)が、大阪市内のコンビニ3店で生理用品を買ってみた。

 最初の店。生理用品を手にレジに進むと、男性店員が無言で黒色のレジ袋に入れてくれた。

 次の店。黒色のレジ袋に入れたあと、「透けないように二重にしておきますね」と白色のレジ袋までかぶせてくれた。

 そして3店目。手際よく紙袋で包装し、白色のレジ袋に入れて渡してくれた。

 三者三様だが、どの店も記者が何も言わなくても対応してくれた。

 あるコンビニの担当者は、この人目に触れない包装は「業界の通例」で、今後もやめることは検討していないと言う。あるドラッグストアの担当者は「見られたくないという感覚が多くの女性にあり、気持ちをくむ形で包装している。包装しないと、苦情にもつながる」と書面で答えた。

 ドラッグストアによっては育毛剤、妊娠検査薬、便秘薬、コンドームなども特別な包装の対象だという。

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#N4Uの「友だち」に聞いた

 生理用品の「袋」、必要ですか――。ニュース4UのLINEに登録する「友だち」に聞くと、返答した男女51人中、21人が必要、30人が不要と答えた。

 「恥ずかしいので隠したい」「自分の健康状態や生理周期を周りに知られたくない」「ゴミ捨てに役立つ」が必要派の理由だ。

 一方、不要派は「資源の無駄」「性にタブーはいらない」。東京都目黒区の女子中学生(14)は「隠さなければならない雰囲気があるのはおかしい。彼氏が彼女のために買うみたいなことが普通になってほしい」と答えた。

 男性にも「誰かに頼まれて、生理用品を買いに行く場合」と仮定して聞いてみると、「隠したいとは思わない。別に違法なものではない」「見えない袋に入れるかどうかは、買う側が決めるべきだ」といった声が寄せられた。

隠さない派「NoBag」起業家らコラボ

 生理用品を扱う企業からは一石を投じる動きが出てきた。

 「#NoBagForMe」(私は袋はいりません)。日用品大手のユニ・チャームが今年6月、こんな企画を始めた。お店で買った時に「隠さなくてもいい」タンポンのパッケージ作りに取り組んでおり、「生理のケアや体に関する知識を知り、気兼ねなく話せる環境作り」が狙いだ。

 この企画のきっかけをつくったのは、起業家のハヤカワ五味さん(24)。多摩美術大学在学中に下着ブランドを立ち上げ、アパレル会社ウツワを創業。生理用品の開発にも取り組む。

 事業を始める前、ツイッターで生理や性にまつわる悩みを募ったところ、「彼氏に生理用品を買ってきてもらいたいけど、恥ずかしいと言われた」「コンビニで買うと紙袋に入れられ、恥ずかしいものを持ち歩いている気分になる」など、1日に7千件以上の声が集まった。「色んな人が悩みを持っているのに、生理について話すと、批判される空気があると感じた」とハヤカワさん。

 今年9月、ネット上で生理用品のセレクトショップ「illuminate」をスタート。シンプルなパッケージデザインの商品を展開している。ナプキンやタンポンのほか、量販店では取り扱いの少ない月経カップも販売している。

 ハヤカワさんは「全員が生理をオープンにした方がいいと言っているのではなくて、言いたい人が言えるような環境になればいいと思う。『隠さないでいい』という選択肢が増えたらいいですよね」と話す。

 ハヤカワさんの考えに、社内で似た構想を温めていたユニ・チャームの担当者も呼応した。担当者の一人、長井千香子さんは「つらい人が救われる土壌を作りたいと思った」と話す。20~30代の社員でつくるチームがハヤカワさんらとコラボし、「見せてもいい」タンポンのパッケージの開発に取り組む。開発した商品は12月に販売予定だ。

 長井さんは「生理は恥ずかしいことではなく、当たり前のこと。女性が声をあげられる選択肢のある世の中にしたい」と話す。

 企画の広報には男性社員も関わる。渡辺仁志さん(40)だ。技術者としてタンポンの形状や素材の改善に関わったことがある。

 「#NoBagForMe」を通じ、女性が生理の悩みを言い出しやすい環境に変われば、男性も思いやりを持ちやすくなる――。そう思っているという渡辺さんは「男性も女性もお互いの体についてよく知らない。お互いの性について考えるきっかけになればうれしいですね」と話す。自身の娘との間でも、生理について自然に話せる関係性を目指しているという。

決めぜりふは「月のものがおしおきよ!」

 生理の「オープン化」を象徴するような漫画が人気を呼んでいる。

 小山健さんの「生理ちゃん」。ウェブメディア「オモコロ」に掲載され、累計閲覧数は2千万回を突破した。2018年にKADOKAWAが書籍化した。

 「月のものがおしおきよ!」。月に一度、仕事で忙殺される女性のもとにふらりとやってくる「生理ちゃん」の決めゼリフだ。

 「どーも生理です」と現れ、女性の下腹部に「生理パンチ」をお見舞い。注射器で血を抜き取る。生理痛や貧血を表現した描写だ。11月には二階堂ふみさん主演で映画化される。

 編集者の青木香里さん(32)は作品が受け入れられた理由をこう分析する。

 「(生理は)今もなおタブー視されることが多く、社会的に可視化されにくいしんどさについて、(女性が)『そうそう、こんな風につらいんだよ』と共感できる喜びや、身近な男性に読んでもらって理解のきっかけを与えてくれる作品であることが反響の大きい理由だと思います」と書面でコメントした。

「隠す」大ヒットのアイデア商品も

 とはいえ、「生理を隠したい」という人は少なくない。周囲に生理だと知られることなくトイレに行ける商品は、幅広い年代に愛用されている。

 ワコールが1996年から販売する下着「ポケット付きサニタリーショーツ」は、取り付けたナプキンがずれにくく、経血がスカートやズボンに染みにくい特殊な防水布を使用している。

 ショーツの内側にはナプキンを入れるポケットがついていて、外出先で手ぶらでトイレに行き、生理用品の交換ができる。ジュニア(小学生~高校生)用から開発が始まり、今は大人用も販売されている。ジュニア用は1枚1千円、大人用は1枚1500円(いずれも税別)から。

 雑貨販売店「アイアップ」が開発した「どっとポーチ」は、女性開発者のこんなひらめきから生まれた。「ハンカチがポーチになれば、生理用品をさりげなく持ち歩けるのに」

 見た目は二つに折りたたんだタオル地のハンカチだが、よく見るとジッパーがついていて、中に物がはいるポーチ状になっている。

 1枚1200~1850円(税別)で年間約60万枚を売り上げる。同店の広報担当、西野太一さん(46)は「ハンカチが1枚100円で買える時代。ご好評いただいているのは、それだけ(生理だと)知られたくない方が多いということなんでしょうか」。

起源は平安時代「恐れ」から「けがれ」へ

 そもそもなぜ生理を「隠す」風潮が生まれたのか。

 歴史社会学者で生理用品の研究を続ける田中ひかるさん(49)によると、医療が発達していなかった時代、血液は死を連想させた。人々は血に触れることが病気のきっかけになると考え、「まず『恐れ』、そして『けがれ』へと意識が変わっていった」。

 日本のこういった「月経禁忌(げっけいきんき)」の起源は平安時代にさかのぼる。1872年に明治政府が法律を定め、「月経禁忌」は公には廃止されたが、各地に根付いた風習は簡単に消えなかったという。

 西日本などの一部の地域では、お産の前後や生理中の女性を隔離するため、戦後まで「月経小屋」が使われた。1970年代になっても、生理中の女性が家の玄関先で1人で食事をする風習が残った地域もあった。

 そういった風習の中で女性は生理を「不浄なもの」として内に秘め、「隠す」意識を強めていった――。

 そう考える田中さんは「オープンに話そうとなってきたのはここ数年の話なんです」と指摘。その背景に「女性の社会進出」がある、と分析する。

 「生理など体にまつわる話題を避け続ければ女性の仕事に支障が出る。それでは社会が回らなくなっている証拠ではないでしょうか」

 ただ田中さんは、従来の「隠す」価値観も同じように尊重されるべきだと思っているという。

 「生理は生理現象のうち排泄(はいせつ)に関わる。デートの時に相手に『トイレに行ってくるね』と言うのが恥ずかしい人がいるのと一緒で、価値観には個人差があって当たり前だと思います」

 田中さんは約20年間、生理用品を専門に研究してきた。研究を始めた頃は生理について公に話すことがはばかられる雰囲気があったという。「以前は正直、『変な人』という目線を向けられることも多かった。でも、今はインタビューで堂々と発言できる」

 月経禁忌が公に廃止されてから140年余り。社会の「生理観」がようやく変わり始めた、と感じるという田中さん。

 「生理は隠すべきじゃないし、恥ずかしく思う必要もない。だけど、個人差があり、隠したいという気持ちを持つことも同じように尊重されなければいけないこと。いまは色んな価値観が存在する過渡期。これからまたどんどん変わってくると思いますよ」(半田尚子)

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