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 つい最近、政府のがん対策についての世論調査の結果が発表されました。10年以上前から継続的に調査が進められているのですが、がん患者の間での働くことへの意識の高まりをうかがわせる内容でした。詳しく見てみましょう。

 9月27日に、内閣府から、「がん対策・たばこ対策に関する世論調査(2019年度)」の結果が発表されました。この調査は、国民意識の動向などを把握することを目的に行われているもので、統計的な考え方に基づいて選ばれた全国の18歳以上の男女3千人を対象に、調査員が訪問する面接形式で実施されています。

 調査テーマは、がん対策の他にも、子育てや介護、環境問題など、時代のニーズに即した様々な意識調査が行われています。どの内容もとても興味深いものばかり。昭和二十年代からのテーマの変化をみても、時代の動きを感じることができます。

 世論調査については、以下のサイトで見ることができます。

(リンク:https://survey.gov-online.go.jp/index-all.html別ウインドウで開きます

仕事と治療との両立への認識

 がん対策の世論調査は、2006年にがん対策基本法が施行されて以来、2007年から、ほぼ2年に一度の間隔で実施されています。

 ただし、2011年については、東日本大震災の発生もあり、実施されていません。がん対策に関する意識調査は、それぞれの年によって調査項目は異なっており、項目を抜き出すと表1のようになります。

写真・図版

 表1にあるように、「がん患者と社会とのつながりについて」「仕事と治療等の両立について」が調査され始めたのは、2013年1月調査からです。これは、第二期のがん対策推進基本計画(2012年6月閣議決定)で「がん患者の就労を含めた社会的な問題」が明記されたためです。

 調査では、「がん患者と社会とのつながりについて」として、「現在の日本の社会では、がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働きつづけられる環境だと思いますか。この中から1つだけお答えください」という設問に対して、「そう思う、どちらかといえばそう思う、どちらかといえばそう思わない、そう思わない、わからない」の5つの選択肢から選ぶことになっています。この回答結果の推移を整理すると、表2のようになります。

写真・図版

 仕事に関する調査が開始された2013年と2019年の調査を比べると、「働き続ける環境だと思う」と回答した人の割合が26.1%から37.1%と向上しています。一方、「働き続けられる環境だとは思わない」と回答する人の割合は、68.9%から57.4%と低下しました。

 この数字の変動を大きいと考えるか、小さいと考えるかは、人によって異なりますが、表2をみれば分かるように、2013年から2017年の間は、あまり大きく変動しなかったことを考えれば、直近2年の変化はとても大きいのではないかと、私は感じています。

 がん対策基本計画などで、がん患者の就労への重要性が明記され、働き方改革とともに、ここ最近になって企業や一般に広がり始めたことをうかがわせるデータでないかと感じています。

治療の支援に課題

 また、2019年の調査結果では、回答者のうち、「通院しながら働き続けられる環境と思うか」という質問について、「どちらかといえばそう思わない」、「そう思わない」と答えた人(946人)を対象に、「がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働き続けることを難しくさせている最も大きな理由は何だと思うか」を聞いたところ、

・「がんの治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから」23.5%

・「代わりに仕事をする人がいない、または、いても頼みにくいから」20.9%

・「職場が休むことを許してくれるかどうかわからないから」19.1%

・「休むと収入が減ってしまうから」16.6%

・「がんの治療・検査と仕事の両立が精神的に困難だから」12.5%

という順番になっています。前回(2017年)の調査結果と比べると、第1位になった「がんの治療・検査と仕事の両立が体力的に困難だから」を選択した人の割合が、19.9%から23.5%と割合が上昇したことが分かっています。

 がんの治療は日々進歩をしていますが、新しい治療方法の登場は必ずしも良いことばかりではありません。様々な副作用に対するケアも重要です。

 がん治療の苦痛をやわらげる緩和医療の普及には、まだ課題があるほか、特にここ数年は、免疫チェックポイント阻害薬など、新しい治療薬が登場した半面、今までにない副作用の問題も生じました。

 就労支援などの環境整備がいくら整っても、本人と病気との関係はずっと続きます。病気はある日、突然やってきます。年齢を重ねれば、何らかの病気、治療はついてきますから、「病気はお互い様」という感覚をもっていくことがこれからの社会に求められているのではないでしょうか。

<アピタル:がん、そして働く>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/

(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。