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 戦時下の大陸で中国人・李香蘭として時代の花形となった女優、山口淑子さん(1920~2014)。亡くなって5年がたつのを機に、未完に終わった晩年のインタビューを肉声とともに朝日新聞デジタルで公開している。このインタビューで、ずっと引っかかっていたことがあった。彼女が一瞬だけ見せた、怒りの表情だ。あれは何だったのだろう――。背景に迫ろうと、私はある研究者を訪ねることにした。

 山口さんは2007年10月から、1回あたり約2時間ずつインタビューに応じた。朝日新聞が所蔵する戦前・戦中の数々の写真を見ながら、大陸の思い出を語ってもらう取材だった。

 その合間の雑談で、満州事変に関わった軍人の話題になり、私が有名な数人を列挙した瞬間だった。

 「土肥原……」

 彼女はその名前にだけ一瞬険しい表情を見せ、憤った低い声で繰り返した。すぐ笑顔に戻ってさりげなく話題を変えたが、その剣幕に強い印象を受けた。

 「土肥原」とは、旧満州(中国東北部)で諜報(ちょうほう)や謀略を指揮し、敗戦後にA級戦犯として処刑された土肥原賢二(1883~1948)のことだ。私は彼女の激しい反応に違和感を覚え、「よほど嫌いなんだな」と思った。

 今回、遺族の了解を得てインタビューを公開したのを機に、彼女が見せた怒りの理由を知ろうと、立教大学特任教授・川崎賢子さん(63)に会いに行った。川崎さんは、山口さんの経歴や人脈を内外の文書で調べ、今春に「もう一人の彼女 李香蘭/山口淑子/シャーリー・ヤマグチ」を出版した研究者だ。

 「土肥原は、彼女の父親やその…

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