[PR]

 台風19号で大きな被害を受けた丸森町で、町議選が12日告示、17日投開票の日程で行われる。町内では、なお200人余りが避難所に身を寄せる。だが、延期されず予定通り実施される見通しだ。立候補予定者からは、「こんな時に」といった恨み節も漏れる。

 町商工会副会長で現職町議の船山俊一氏(57)は連日、町内を奔走している。避難所に行かず自宅の2階で過ごす人たちに食べ物や水を届けたり、土砂の片付けを手伝ったり……。「選挙ムードにはなれない」

 自身が町の中心部で経営している漬けもの店「志白屋」も浸水被害にあった。土砂の撤去や片付けは「家族任せで全然できていない」という。台風の被害で町から人が流出し、商工業者は廃業するのでは、と懸念する。「新しいまちづくりには若い力が必要。言葉は悪いけど、(自分は)落ちてもいいから今は町の復旧が優先」

 現職の一條功氏(68)の自宅にも土砂が流れ込み、風呂とトイレが使えなくなった。わずかな時間も片付けに追われ、「選挙と言ってもどうしたらいいのか。今は全部が中途半端になっている」と困惑する。

 議員になる前から「災害のないまちづくり」をめざし、排水ポンプの改修を町に要望。今年度中に完了するはずだった。「『想定外』では済まされない。さらに強化していかなければならない」と訴える。

 この2人を含めた立候補予定者の多くは10月25日、選挙運動をポスター掲示や選挙はがきにとどめ、選挙カーや拡声機の使用を減らすことを申し合わせた。被災者の復旧活動を妨げないための配慮という。

 ただ、町選挙管理委員会によると、地盤とする地域の被害が大きい立候補予定者には不安が広がる。強い訴えができない可能性があるからだ。町議選は町全体が一つの選挙区で、わずかな得票差が当落を左右する。町選管は広報車を従来より1台増やし、告示日から毎日町内をくまなく回って投票を呼びかけることを検討している。

 10月23日の立候補予定者説明会には、現職14人と元職1人、新顔2人の計17陣営が出席した。定数は14。一部で立候補を見合わせる動きもあるが、選挙戦になる可能性がある。

投票所が避難所、掲示場設置難しい所も

 町議選が行われた場合の課題は多い。

 投票所となる町内8カ所の「まちづくりセンター」のうち、今月1日時点で4カ所が避難所となっており、計112人が身を寄せている。町役場隣の丸森まちづくりセンターには最多の72人がいる。町選管は、センター内の別部屋を投票所にするなど「避難生活に影響しないよう配慮する」としている。

 また、ポスターの掲示場を設ける予定の71カ所のうち、筆甫(ひっぽ)地区の1カ所は土砂崩れで通行が難しく、町選管は対応を迫られている。避難している有権者には、選挙人名簿と避難所名簿を照らし合わせて「投票所入場券」を届ける方法を検討している。

 被災の影響を避けるため延期はできないのか。

 2011年3月11日の東日本大震災の時は、臨時特例法が同月22日に公布され、統一地方選の一環として予定されていた県議選や仙台市議選などが延期された。総務省が延期対象の選挙を指定し、例えば県議選は、4月29日に満了する県議の任期を11月12日に延ばして対応した。

 だが今回は、数多くの地方選挙に影響した東日本大震災時とは状況が異なる。開会中の臨時国会で、特別立法がなされる機運は出ていない。(井上充昌、窪小谷菜月)