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 台風19号で浸水被害などを受けた地域が、窃盗や特殊詐欺といった犯罪などに狙われている。地元の消防団が自主的に巡回活動を続けているほか、県警や県は警戒を強めながら、住民に注意を呼びかけている。

 23日の午後8時。消防服に身を包んだ長野市消防団・長沼分団の団員2人が、赤い車に乗り込み、見回り活動に出発した。

 「カンカン、カンカン」

 半鐘の音を鳴らしながら、車は浸水被害に遭った長沼地区を進んでいく。一部で街灯が復旧した地域もあるが、千曲川の堤防の決壊現場近くでは工事の作業員以外に人気はない。暗闇の中をゆっくりと進む消防団の車の前照灯が、道の両脇の崩れかかった家屋や、山積みにされた災害ごみを照らしていた。

 長沼分団によると、被災後、壊滅的な打撃を受けた穂保、津野、赤沼地区を中心に、ボランティアや消防団などを装ってうろつく不審者が多数目撃されているという。そこで、比較的浸水被害が軽かった大町地区の消防団が、17日から長沼地区などを約1時間かけて巡回する活動を始めた。

 この日、巡回した大町班の飯島宏直さん(40)も、自宅やリンゴ畑が浸水。日中は片付けに追われるが、夜は地元のために活動している。飯島さんは「こんな大変な時に、人の弱みにつけ込んでくる犯罪者は許せない。少しでも抑止力になれば」と話した。

 念頭にあるのは、災害のたびに取りざたされる「被災地泥棒」だ。2016年の熊本地震では、直後から被災住宅で家財や排水パイプなどが盗まれる事件が相次いだ。震災から1年以上たった2017年12月には、熊本市内の寺から現金計約1200万円が入った金庫二つを盗んだとして、復旧工事でこの寺に出入りしていた土木作業員の男2人が、建造物侵入と窃盗の疑いで熊本県警に逮捕される事件もあった。

 長野県警によると、今回の台風でも、被災した地域の住宅の屋外に置いてあったものが盗まれるといった事件が、23日までに4件起きた。このうち、長野市穂保では、住人が避難している間に、屋外にあった電動式のくみ上げポンプが盗まれたという。このため県警は、24時間体制で被災地区をパトカーで巡回し、警戒を強めている。

 台風に関連した不審な電話も確認されている。長野県のくらし安全・消費生活課によると、17日には、東信地区の70代女性宅に「国立福祉センター」の職員を名乗る人から、「あなたには介護施設に入居する権利がある。被災した人にその権利を譲ってほしい」といった電話があった。

 このほか、東信地区の40代女性宅には、土木業者から「台風の影響があるかもしれないので、無料で床下の点検をさせてほしい」といった電話があった。これらは「劇場型詐欺」や「点検商法」の手口の恐れがあり、事件やトラブルに巻き込まれる可能性があるという。担当者は「災害に便乗した詐欺や悪徳商法には、特に注意してほしい。不審に思ったら消費生活センターに相談を」と話す。(里見稔)