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 金沢市で、藩政期に由来する町名を復活させる動きが盛んだ。11月1日には金石地区の金石新町、金石今町、金石海禅寺町がよみがえる。今月21日にも金石地区の5町会が「旧町名復活の申出書」を市に提出した。

 金沢市の中心部から県道17号を車で西へ。金石交差点を過ぎた辺りから、明らかに町の雰囲気が変わる。

 いま、金沢市で「旧町名復活」を牽引(けんいん)している金石地区。車を降りて歩いた。

 狭く、曲がりくねった道が様々な角度で交わり、迷路のようだ。庭がある大きな民家もあれば、トタン材で壁を補強した一軒家も。日本海からの潮風にさらされて木材は深い色をたたえ、住人たちの暮らしのにおいが漂う。

 地区は北前船の寄港地として栄えた。1962年成立の住居表示に関する法律によって、金石松前町や金石御船町など、歴史を感じさせる名前が消えたことを悲しむ住民は多かったという。ただ、愛着だけが復活の動きを後押ししたのではない。鶴山庄市・金石町校下町会連合会会長は「理由の一つは大規模な火事でした」と振り返る。

 2016年8月。金石地区にあった木材会社の敷地内から火が出て、会社の建物4棟や近隣の住宅8棟などが焼けた。

 幸いけが人はなかった。「住人たちの声かけもあって奇跡的に、です。昔ながらの地域のつながりの大切さを実感した」と鶴山さん。改めて、地域に愛着を持って欲しい、と、歴史ある旧町名の復活に向けた議論を開始。17年から20年までに、地区の30町会に復活を検討してもらうよう呼びかけた。

 結果、今回の3町を含め、金石地区では計6町の名前が復活し、さらに5町が加わる予定になった。

 市によると、旧町名復活への運動は30年近く続いている。1991年、金沢経済同友会が市に提言。96年には市議会でも議論され、市が本格的に取り組む姿勢を示した。初めて旧町名を取り戻したのは主計(かずえ)町で、ちょうど20年前。これまでに計17町が復活している。

 旧町名復活は、住民の話し合いを経て町会が決定し、市長に申し出る。その後、審議会の諮問、市議会の議決、市長の告示といった手続きに約1年必要という。変更に伴い、住民は表札を変えたり、金融機関などに住所変更をしたりしなければならない。費用負担を減らすため、市は世帯主に2万円、店主に15万円をそれぞれ助成している。

 市地域コミュニティ活性化推進室の安江一智室長は「面倒だという声、そもそも旧町名になじみがない、といった声もあります」。ただ、復活を果たした地域では、転入者や若い世代も巻き込んで議論する場ができ、「顔の見える地域」の再生につながっているという。(岡純太郎)