2万7千人の町になぜ立派なタワー?きっかけはあの事業

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山崎輝史
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 山も大きなビルもない平らな群馬県の町に、59・5メートルの正三角柱が突き刺さっている。邑楽(おうら)町シンボルタワー(同町中野)だ。人口約2万7千人の町にしては唐突感があるが、どうしてこんな「立派」なタワーが?

 「ダメそうだったら、私が背中を押してあげるから」。ほぼ毎日タワーに階段で登頂している木村キヨさん(76)は、同行取材を申し出た166センチ90キロの記者(25)に言った。

 展望室(地上36メートル)までは189段で、およそビル12階分。3分30秒ほどで上り切る。息も切れ切れに下に降りると、「さて、行きますか」。1回目と同じペースで登頂。結局3往復した。噴き出す汗でめがねが曇り、肝心の風景はまともに見えない。木村さんは最高8往復したことがあるという。「2階建ての家の階段はきついのに。不思議よね」

 タワーでは、階段を昇降するたびにスタンプを押せるカードを2千円で販売している。スタンプの枠は105回分。25回で筑波山、69回で男体山、105回で富士山の高さに相当するという。木村さんは4枚のカードを完成させ、この日5枚目に100個目のスタンプを押した。「なんでも慣れ。2千円は、医者の費用に比べれば安いもの」

 タワーは1993年5月開業。きっかけは竹下登政権が「ふるさと創生事業」と銘打って全国の市町村に交付した「1億円」だ。89年、町内からアイデアを募って、町民代表14人が使い道を話し合った。

 その1人で、大信寺住職の岡田真幸さん(67)=同町篠塚=は「子どもみこしに、地区の案内板設置……。様々な案がありました」と振り返る。シンボルタワーの決め手は、文字通り「象徴が欲しい」。「高い場所と言えば古墳くらい。ちょっとした盛り土から町を眺めたら、風景が良かった」と推したという。結果的に総工費は5億円超。バブル期とはいえ当然、賛否両論があり、町長選のテーマにもなった。

 完成から四半世紀。「完成したらしたで、当たり前のものとして定着したのかな」。当時町外れだったタワー周辺は今、町役場や図書館、中央公民館などが集積している。「町全域で見えるから、現在位置も分かりやすい」

 ただ岡田さんには、少し残念なことがある。愛称の「未来MiRAi」が定着しないことと、リピーターが少ないこと。「ディズニーランドのように、頻繁にリニューアルする訳にいかない」。実は岡田さんも2、3年上っていない。

 さて目玉の眺望は平らな町の…

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