愛くるしい娘役から上品な母親役、そして温かい祖母役まで、八千草薫さんは非常に息長く映画やテレビドラマの一線で活躍してきた。だから、往年の映画ファンだけではなく、若い世代にまでその名前が知られている。

 「宮本武蔵」シリーズのお通や「男はつらいよ 寅次郎夢枕」のマドンナなどが、どの世代にも共通する八千草さんのイメージだろう。2015年に公開された、80代半ばでの主演映画「ゆずり葉の頃」にはこんなシーンがある。

 八千草さんが演じた市子が、宮という画家(仲代達矢)の個展を見に、東京から軽井沢に出かける。宮は市子の幼なじみ。彼女は宮に恋心を抱いていた。軽井沢で「彼に会わせてあげよう」という人が現れる。その時の市子の反応が少女のように愛らしいのだ。

 インタビューで八千草さんは「わたし、子どもっぽいところがあるから」と、はにかんでいた。決して若作りではなく、年齢にふさわしい可憐(かれん)さをいつも持ち続けている人だった。

 ただ、こうした天然の可憐さや…

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