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 男性のがんのなかでも、最近特に罹患(りかん)率が高くなっているのが前立腺がんです。前立腺がんを早期発見するには、採血してPSA(前立腺特異抗原)の値を測定する方法があります。PSAが「4・0ng/ml」よりも高ければ、前立腺の病気がある可能性が高くなります。

 そのような場合には、前立腺に針を刺して組織を採取し、顕微鏡でがんの診断を下します。これを「生検」と言います。比較的安全な検査ですが、出血・感染症などの合併症の危険が数%あるため、私たちの科では安全のため1泊2日の入院検査を勧めています。

 前立腺がんと診断された患者さんは、治療の前にがんがどの程度進行しているかを検査します。必要な検査は、CTやMRI、骨に取り込まれやすい物質を注射して、がんが骨に転移しているかどうかを調べる骨シンチグラムなどです。

 治療方針はPSAの値、がんの進み具合(進行度)、悪性度、患者さんの年齢、合併症の有無などを勘案しながら選択することになります。医師と患者さん、ご家族が話し合い、みなさんが十分納得された上で決定します。前立腺がんの治療法は複数あり、それらを組み合わせて行うこともあります。

 早期で発見された悪性度の低いがんであれば、定期的に生検を行いながら、PSA検査や、肛門(こうもん)から指を入れて前立腺のしこりや硬さを調べる直腸診、超音波を発信する人さし指程度の棒を肛門から挿入する経直腸エコー検査などで経過観察をします。これをPSA監視療法と言います。

 前立腺に限局したがんの第1選択となる治療法の一つが手術療法です。前立腺と精囊(せいのう)を摘出する「前立腺全摘除術」が一般的です。この手術は「ロボット支援手術」が保険適用となっています。ロボット支援手術は開腹手術と比べて出血量と合併症が軽微で、患者さんの体への負担が非常に少なくなっています。手術の翌日には食事や歩行が可能で、早期退院も可能になりました。加えて、繊細で正確な手術を行えるので、尿失禁や勃起障害といった前立腺全摘除術による後遺症も少なくなっています。

 放射線療法は手術と比べて患者さんの身体的負担が軽く、75歳以上の高齢者でも治療が可能です。痛みなどの症状緩和を目的に行うこともあります。前立腺がんに対する治療効果は手術療法、放射線療法のどちらも同程度です。放射線をあてる方法には、体の外から前立腺に照射する外照射法、外照射法のなかでも治療したい部分に集中して照射する最新のIMRT療法、放射線を発する数ミリの小さい線源を前立腺に挿入する小線源刺入法(ブラキ療法)があります。当院ではすべての治療が施行可能です。

 前立腺がんは、男性ホルモンの影響を受けます。従って、男性ホルモンの働きを抑えることで、がんの勢いを弱めることができます。それが内分泌療法で、外科手術で精巣を摘除して男性ホルモンの分泌を抑える方法と、薬を使って男性ホルモンの分泌を抑えたり、前立腺細胞に作用するのを防いだりする方法があります。この治療で主に使われる薬剤には、「LH―RHアゴニスト」「Gn―RHアンタゴニスト」「抗アンドロゲン剤」があります。

 内分泌療法に治療効果が認められなくなった前立腺がんを「去勢抵抗性がん」といいます。その場合、抗がん剤である「ドセタキセル」「カバジタキセル」を使った化学療法を行います。「エンザルタミド」「アビラテロン」といった新しいホルモン薬も使えるようになりました。骨への転移に有効なアルファラジンという薬もあります。

 早期であれば根治が可能であるのに加え、治療による後遺症や副作用を抑える方法、あるいは治療の選択肢も増えています。50歳を過ぎた男性の皆さんは、定期的なPSA検査などを行い、早期発見に努めてください。(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座教授 大山 力)