湾岸戦争が終わって間もない1991年4月、緒方貞子さんはイラク・トルコ国境に向かってヘリコプターに乗り込んだ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップに就任してから3カ月。自治を求めて蜂起した少数民族のクルド人がイラク政府に鎮圧され、山岳地帯に逃げ込んでいく姿を目の当たりにした。

 「地形的にもトルコ側は絶壁になっている。イラク側に安全地帯をつくり、難民キャンプを設営する。難民たちを彼らの自国(イラク)で守ることを考えた」

 それまで難民は、国境を越えなければ国際支援できないのが原則だった。しかし、「一番大事なことは苦しんでいる人間を守り、苦しみを和らげることだ」との信念から運用を変えた。

 現場の状況を踏まえ、ルールに…

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