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第1回

 11年3月に高さ13メートル超の津波に襲われて炉心溶融事故を起こした福島第一原発をめぐり、東電の元会長ら3人が業務上過失致死傷の罪で起訴された事件。9月の一審判決は全員無罪の結論だったが、その捜査や公判の記録が各地の原発関連の民事訴訟に送付され、記者はその多くを閲覧した。記録から浮かび上がる事実をたどった。

■奥山俊宏 編集委員89年入社。著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店)で第21回司馬遼太郎賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の調査報道で日本記者クラブ賞(2018年度)

 2005年12月14日、東京・霞が関の経済産業省庁舎の会議室で小野祐二(57)は切り出した。

 「女川で基準地震動を超えたことで、想定を上回る自然現象が実際に発生しうることが明らかになった」

 原子力安全・保安院の原子力発電安全審査課で審査班長の地位にあった小野。目の前には東京電力で原発を担当する8人の技術者がいた。小野は要請した。「想定外事象の検討を進めてほしい」

 4カ月前の8月16日、東北電力の女川原発が宮城県沖地震で激しい揺れに見舞われ、一部で設計上の想定を上回った。首席統括安全審査官の平岡英治(63)ら保安院幹部にとってそれは基準の甘さを疑わせる「衝撃」だった。

 同じころ平岡は、保安院の担当…

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