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 朝の身だしなみのために鏡に向き合う車いすの男性、ピンクのマニキュアが鮮やかな四肢まひのある女性の手……。入所施設で暮らす重い障害のある人たちを、ろう者の写真家が数カ月にわたって撮影した。入所者たちとまっすぐに向き合ってとらえた作品が、ありのままの日常を温かく、力強く伝える。

 撮影したのは、写真家の齋藤陽道(はるみち)さん(36)。難病患者や障害者、性的少数者らのほか、人気バンドのジャケットなども手がけてきた。

 「入所者を被写体に、写真展を開きたい」。神奈川県藤沢市の障害者入所施設「湘南希望の郷(さと)」が、齋藤さんに依頼した。きっかけは相模原市の施設「津久井やまゆり園」で3年前、障害者19人が命を奪われた事件。写真の表情やまなざしから、重い障害のある人の「声」を感じてほしいと考えた。

 齋藤さんが撮影を始めたのは今年6月。時には身体障害や知的障害のある24~87歳の60人が暮らす生活フロアに泊まり、うつむく男性には笑顔でじっくり向き合い、戸惑う女性には筆談で言葉を交わした。「みなさんのテンポにひたり、色んな関わり方があると気づかされます。施設は隔絶された場というイメージがありましたが、友だちの家に行くくらいの感覚でいいと教えてもらいました」

 自室で好きな演歌などを録音したカセットテープを手にする視覚障害のある男性、施設の夏祭りで夜空に打ち上げられた花火……。これらを展示する写真展は23日、施設内で開かれる。コンセプトは、風通しのいい施設。入所者の生活空間を開放し、布にプリントされた約120点を展示するというユニークな試みだ。

 写真を布にプリントする手法は、齋藤さんのアイデアだ。「誰かが通る度に布がはためき、軽やかに写真を楽しみながら障害のある人の日常を思う。そんな情景と、風通しのいい施設というイメージが重なりました」。95センチ四方の写真をプリントした長さ15メートル、幅1メートルの布10枚が、生活フロアの廊下や食堂、中庭、施設の入り口の木々などを彩る予定だ。

 写真展を発案したのは、施設を…

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