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 国内外から観客など延べ約1010万人(予定)が訪れる東京五輪・パラリンピック。猛暑による熱中症や感染症の流入、大規模な事故やテロなど、多くの人に健康被害が生じる事態も想定される。開催まで300日を切る中、現場の医療態勢は十分なのか。医療の課題や取り組みを紹介する。

人が密集、災害リスク増 救急医療体制は

 コンサートやスポーツイベント、初詣など一定期間に限られた地域に同じ目的で多くの人が集まった状態を、災害医療の用語で「マスギャザリング(MG)」と呼ぶ。人が集まることで、熱中症や感染症のほか、将棋倒しなど多数のけが人が出るような災害の発生リスクが高まるとされる。

 国際的なMGの例として、イスラム教の聖地・メッカ巡礼(ハッジ)がある。200万人以上が世界から集まる大イベントで、髄膜炎の流行や巡礼者が折り重なって倒れて死亡する事故などが起きている。2016年のブラジルのリオデジャネイロ五輪では、現地で流行していたジカウイルス感染症が話題になった。

 東京五輪・パラリンピックでも、訪日外国人の増加によってデング熱やマラリアなどが流入したり、外国人が一般医療機関を受診する機会が増えたりする可能性がある。

 国際医療福祉大学の和田耕治教授(公衆衛生)は「東京五輪・パラリンピックは、外国人との共生に向けた通過点に過ぎない。国際化が進む中、外国人労働者も増加し、それを前提にした対策を考えていかなければならない」と指摘する。

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 開催にともなう様々な医療の課題に対応するため、日本救急医学会を中心とした関連学会は16年4月、学術連合体(コンソーシアム)を立ち上げた。感染症や外傷、集中治療、中毒など様々な専門分野の25団体が、対応策の検討を進めている。

 「世界的にテロが増えているが、国内で具体的な対策を進めている医療機関はまだ少ない」――。10月上旬、東京都内で開かれた同学会の総会では、大会開催中の医療態勢の課題についてのシンポジウムがあり、これまで国内で整備が進んでいなかったテロ発生時の態勢についても議論された。

 シンポでは、各学会などの取り組みが報告された。日本外傷学会は、銃や爆弾を使ったテロによる負傷者を診察する際のガイドラインを作成。日本臨床救急医学会は、訪日外国人診療に関するガイドラインをまとめ、診察時のコミュニケーションや医療費支払いに関する注意事項などを盛り込んだ。日本感染症学会は注意すべき76種類の感染症の解説をサイトで公表した。

 学術連合体で実務を担当する東京大の森村尚登教授(救急科学)は「開催まで時間はあまりないが、これからが仕上げの時期。東京五輪・パラリンピックをきっかけに、地域の救急医療を整備し、将来へのレガシー(遺産)としたい」と話す。

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