Hagexさん刺殺事件11日初公判 恨み募らせた被告
昨年6月、福岡市内で有名ブロガーが刺殺された事件の裁判が11日午前に始まる。被害者は「Hagex」のハンドルネームで活動していた男性。被告は、ネット上で誹謗(ひぼう)中傷を繰り返していた男だ。
事件が起きたのは2018年6月24日、日曜日の夜。起訴状などによると、あらましはこうだ。
福岡市中央区の旧大名小学校跡地の起業家支援施設では、この日午後5時半から、IT関係のセミナーが開かれていた。講師を務めたのは、インターネットセキュリティー関連会社の社員、岡本顕一郎さん(当時41)。セミナー終了後、1階のトイレに入った。
そこに無職松本英光被告(43)=福岡市東区=が現れた。同7時4分ごろに施設に侵入し、岡本さんを待ち伏せしていた。7時59分ごろ、松本被告はトイレやその近くで、持っていたレンジャーナイフ(刃渡り約16・5センチ)で岡本さんの首や胸、背中などを多数回刺し、殺害したとされる。
約3時間後、東区内の交番に出頭し、殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕された。福岡地検は、精神状態を調べるための「鑑定留置」を7月から約3カ月間実施。「刑事責任を問える」と判断し、10月5日に殺人と銃刀法違反、建造物侵入の罪で起訴した。
この事件が特異なのは、被害者と被告の関係性だ。2人に面識はなかった。松本被告は警察の調べに「インターネット上(のやりとり)で恨んでいた」などと供述した。
岡本さんは「Hagex」の名前で活動する著名な匿名ブロガーで、本も出している。一方、松本被告は他のネットユーザーに対して「低能」と中傷する書き込みを繰り返したり、「死んだほうがいい」とメッセージを送ったりしており、ネット上で「低能先生」とも呼ばれていた。
岡本さんは自身のブログで「低能先生」の書き込みを問題視。ブログサービスの運営者に何度も通報した。こうしたことに対し、松本被告は恨みを抱くようになったとされる。
松本被告は逮捕後、「(岡本さんの)名前は知らなかった」とも供述。サングラスをかけた岡本さんをネットで見て、外見から「Hagex」と確認したとみられる。
松本被告が出頭する直前には「犯行声明」がネットに投稿された。「俺を『低能先生です』の一言で通報&封殺してきたお前らへの返答だ」。松本被告は「自分が投稿した」と認めているという。(角詠之)