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 1人で家を出た認知症の高齢男性が列車にはねられ、鉄道会社から遺族が高額の損害賠償を求められた――。最高裁まで争われた列車事故のニュースを覚えている人は多いだろう。そんな万一のトラブルや事故の不安を、どう軽減するのか。認知症になっても安心して暮らせる街を目指し、民間保険を使った事故救済制度を独自に導入する自治体が増えている。朝日新聞の調査では、少なくとも39市区町村がすでにこうした制度を導入している。

 各自治体が加入しているのは「個人賠償責任保険」という民間保険だ。買い物中に商品を壊した、自転車で通行人にケガをさせた、などの事故で本人や家族が賠償責任を負ったときに補償される(自動車事故は対象外)。2017年11月に神奈川県大和市が先駆けて導入した。

 認知症に関する民間保険には、診断されると保険金が出る「認知症保険」があるが、これとは異なる。

 各自治体のウェブサイトや広報などの情報をもとに朝日新聞が各自治体に確認したところ、11月現在、神戸市、富山市、東京都葛飾区など、少なくとも39市区町村が、この保険を活用した補償制度の運用を始めている。東京都中野区も近く開始予定だ。名古屋市など2市が実施に向けて検討中だ。情報収集中の自治体はほかにもあり、今後さらに実施数は増える可能性が高い。

見送られた公的補償創設

 認知症の人によるトラブルの公的補償に関心が高まったのは、ある鉄道事故の裁判がきっかけだった。

 1人で外出中の認知症の高齢男性(当時91)が、愛知県のJR東海道線の駅で列車にはねられて死亡、男性の妻と長男ら遺族がJR東海から振り替え輸送費など約720万円の損害賠償を求められた。

 16年3月の最高裁判決は、家族に賠償責任はないという判断を示した。だが事情によっては介護家族が責任を問われる余地を残した。

 判決を受けて認知症の人の事故の補償について検討した厚生労働省など関係省庁による連絡会議は16年、「ただちに制度的対応を行うことは難しい」として、公的補償創設を見送った。

 2025年には65歳以上の認知症の人は約700万人、高齢者の5人に1人になると見込まれる。誰もが当事者になりうる認知症。こうしたなか認知症の人や家族を地域で支え、安心して暮らし、外出できる街にしようと、独自の救済制度導入に踏み切る自治体がでてきた。

 大半の自治体が保険料全額(年…

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