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 腎臓は長径10センチほどの臓器で、左右に一つずつあり、体の背側の後腹膜腔に位置します。血液から老廃物や水分を濾過(ろか)して尿をつくったり、血圧を制御するホルモン(レニン)や赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌したりします。腎がんは腎臓の尿細管という管から発生する悪性腫瘍(しゅよう)で、腎臓の悪性腫瘍の85~90%を占めると言われています。女性に比べ男性に2~3倍多く発症し、年々増加傾向にあります。50~70代に多く発症しますが、若年者にみられることもあります。

 一般に腎がんのリスク因子として挙げられるのは肥満、高血圧、喫煙などですが、はっきりとした原因はわかっていません。脳血管腫、腎細胞がん、褐色細胞腫を引き起こす遺伝性疾患「von Hippel―Lindau病」や腎不全で透析を受けている患者さんは腎がんが高率に発生するため、定期検査が必要と言われています。

 腎がんは症状のないことがほとんどで、健康診断のためのエコーやCTで偶発的に発見されることが多いがんです。しかし、大きな腎がんでは血尿、発熱、痛み、腹部の腫瘤(しゅりゅう)がみられるほか、骨や肺に転移していることもあります。

 腎がんと診断された場合は治療前にがんの進行度を検査します。検査は主にCTですが、必要に応じて骨への転移を調べる骨シンチグラムやPET―CTを行うこともあります。治療方針はがんの進行度や患者さんの年齢、合併症の有無などを考慮しながら、医師と患者さん、ご家族で話し合って決定します。

 腎がんの治療は転移がなければ基本的には外科的治療が行われます。転移のないがんであれば手術によって根治が期待できます。通常はがんとともに腎臓をすべて摘出する根治的腎摘除術を行います。内視鏡の発達で腹腔(ふくくう)鏡による手術(腹腔鏡下根治的腎摘除術)が行われるようになり、傷が小さく体の負担も以前より軽減されています。

 がんが小さく、腎臓の正常な部分を温存することが可能な場合は腎部分切除術を行うことがあります。私たちの科ではロボット支援下腎部分切除術を行っていますが、腫瘍の大きさや場所によっては難易度の高い手術になる場合があります。がんが大きくて腹腔鏡下手術が困難な場合や、過去に大規模な腹部手術を受けた経験がある場合、がんが腫瘍塞栓(そくせん)(がんが血管内に浸潤し血管内につくられた塊のようなもの)を形成し、それが腎静脈から下大静脈に達している場合は開腹手術によって根治的腎摘除術を行います。

 がんが他臓器に浸潤している場合や下大静脈にがんが達している場合は手術が非常に困難な場合が多く、消化器外科、心臓血管外科と合同で手術を行うこともあります。

 転移のある腎がんでは以前はインターフェロンやインターロイキンなど生理活性物質(サイトカイン)を使用したサイトカイン治療を行っていましたが、現在は分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬を主に使用しています。分子標的薬は、がんや血管の増殖に関わる因子を抑えることで、腫瘍を縮小させる効果を発揮するものです。内服治療が中心で、外来通院で行うことができます。

 免疫チェックポイント阻害薬は最近特に使用されるようになった薬剤で、がんが免疫機能から逃避するのを阻害し、体内のリンパ球ががんを攻撃できるようにする治療です。免疫チェックポイント阻害薬は肺、内分泌臓器(下垂体、副腎、甲状腺)、消化器に重篤な副作用を起こすことがあるので、他科の医師と連携してチーム医療で使用することが不可欠となります。

 腎がんの治療は病気の進行度によって治療方針が異なり、使用できる薬剤も増えたことで非常に複雑になってきています。腎がんと診断された場合はすぐに専門医を受診することをお勧めします。

<アピタル:弘前大企画・知って得する 泌尿器科の話>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/(弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座准教授 橋本安弘)