負い目につけこまれる東電 賠償金ビジネス横行の現場で

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小手川太朗 杉浦達朗 吉沢英将
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 東京電力福島第一原発事故の被災事業者への補償を食い物にする詐欺事件が後を絶たない。13日には男女10人が新たな容疑で再び逮捕された。補償担当だった東電の元男性社員の証言からは、「加害者」の負い目と、そこにつけ込んだ「賠償金ビジネス」が横行している実態が浮かぶ。

 警視庁は13日、無職の郡司明容疑者(50)=札幌市豊平区平岸2条1丁目=ら10人を再逮捕した。

 捜査2課によると、逮捕容疑は2013~16年、原発事故の影響で福島県いわき市の飲食店の売り上げが減ったとするうその申請書類を作成するなどし、東電に賠償金を請求して約1350万円をだまし取ったというもの。調べに対し、郡司容疑者は黙秘し、3人が否認しているという。

 郡司容疑者は、賠償金請求の代行をうたうNPO法人(解散)の職員の男(61)=別の賠償金詐欺事件で受刑中=のグループで幹部を務めた後、いわき市を拠点に「独立」したという。市内の事業者約20人に指南して5億円近くを同様に詐取し、うち8~9割を手数料として得ていた、と警視庁はみている。

元社員「門前払いできない」

 「『とにかく早く、何とかして払え』が合言葉だった」。東電の「福島原子力補償相談室」に所属していた元社員は取材に、当時の内情をこう明かした。

 書類の内容まで詳細にチェックする余裕はなく、必要書類の形式が整えば請求が認められるようにしていたという。「加害者である東電からすると門前払いはできず、不正はないだろうという性善説でやらざるを得なかった」

 そこに目を付けたのがNPO法人(解散)職員の男(61)だった。

 原発事故から半年後の201…

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