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 今年の京都賞(稲盛財団主催)は、スマートフォンやテレビに使われている有機ELの実用化に貢献した香港科技大IAS東亜銀行教授のチン・W・タン氏(72)が先端技術部門を、宇宙の3D地図を作る国際プロジェクトを主導した米プリンストン大名誉教授のジェームズ・ガン氏(81)が基礎科学部門をそれぞれ受賞した。両氏に研究への思いを聞いた。(聞き手・野中良祐

有機EL、偶然から実用に道

 ――なぜ有機ELの研究を始めたのですか?

 1975年から31年間、イーストマン・コダック社に在籍して、最初は有機材料を太陽電池に使う研究をしていました。発電効率を100倍に、コストを10分の1にと言われたのですが、難航していました。

 2、3年続けても向上せず、焦りもあって違う研究に移ろうと考えました。そんなとき、薄い膜を使った太陽電池に低い電圧をかけると光を発することに気づいたのです。偶然でしたが、光から発電する太陽電池とは逆に、電気を光にするELに使えると思いました。

 ――有機ELの実用化をどのように感じましたか?

 1997、98年ごろ、パイオニア社のカーオーディオに搭載されたのを初めて見ました。メイド・イン・ジャパン。製品が送られてきて、大変うれしかったです。

 当時は液晶が席巻していてビジネス上の収益は難しい段階でしたが、有機ELに可能性を見いだした日本のトウマさん(当摩照夫・当時東北パイオニア開発技術本部次長)たちが製品化してくれました。今ではいろいろなところで使われ、普及に満足しています。

 ――ディスプレーの市場争いは今後どうなるでしょうか?

 マーケティングは専門ではないので個人的な意見ですが、有機ELはコストが下がりつつあり、小さい製品では席巻すると思います。しなったり、折り曲げたりできる有機ELは、薄く、軽くといったスマートフォンや時計の要求に応えられます。

 テレビは見る人が減ってマーケット自体が縮小傾向ですが、バックライトが必要な液晶と異なり、光を消せる有機ELは漆黒も表現できます。有機ELの未来は明るいと思っています。

 ――今の研究者の研究環境に思うことはありますか?

 イーストマン・コダックにいた…

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