ツッコミ待ちか英国新喜劇 離脱すんのかい、せんのかい
もはや鉄板の冗談ネタになりつつある。
今月12日にロンドン近郊であった産業団体の集まり。登壇者の一人が冒頭こう切り出した。「息子が最近、数を学び出してね。お父さん、なんでも良いから大きい数字のクイズを出してとしつこいんです。だから、今朝はこう問いました。『英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めてから何日たった?』。息子は走って逃げました」
会場は爆笑。ちなみに、答えは1235日だった。
英国のEU離脱問題を、欧州では「英国」のブリテンと「出る」のエグジットを混ぜた造語「ブレグジット」の名前で呼ぶ。春から延期して10月31日に設定されていたブレグジット予定日は、先日、さらに来年1月末に延びた。通算3度目の延期だ。一歩間違えれば世界経済を混乱の渦に巻き込みかねないと世界が緊張したが、現場の英国はどうだったか。
魚屋の店主が一言
ブレグジットで心配なのは、「合意なき離脱」だ。「合意」とは英国とEUが離脱後のことを定めた約束の話で、貿易のルールなどを一定期間、今のまま保つことなどが柱となる。これがないと、人々の生活や企業活動に支障がでる。ところが、英国は議会の意見がまとまらず、いまだに英政府とEUの「合意」ができていない。
さぞかし街の人は不安だろう。10月上旬、私はロンドン北部の商店街を取材した。
開店して8年になるという魚屋。アフガニスタン人の店長アブドゥルさん(45)は「そうなれば、私は店を失う」と眉をひそめた。
店内にはサケやスズキ、エビ、タコなど約60種類の魚介類が並ぶ。それらを指さし「これはフランス産、あれはスペイン産」。なるほど、合意なき離脱になれば手に入りにくくなったり、ポンド安で仕入れ値が上がるかもしれない。深刻そうだな。一通り話を聞いて取材を終えようとすると、アブドゥルさんは私の顔をのぞき込んで言った。
「ところで、あんた、本当に『合意なき離脱』なんてあると信じてるのか?」
今度は私が眉をひそめた。え…