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 今日は前立腺がんに対するロボット手術(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術)についてお話しします。

 早期の前立腺がんの治療には手術や放射線療法があります。どちらが良いかは患者さん個々によって異なりますが、元気で手術可能な方にはロボット手術を勧めています。

 ロボット手術は、3D内視鏡カメラと3本のアームを患者さんの体に挿入し、術者が離れた操縦席に座り遠隔操作で手術を行います。操縦席で手を動かすと、その手の動きがロボットに忠実に伝わりますので、繊細かつ低侵襲な手術が可能となります。特に体内の深い所にある臓器を、1~2センチの小さな傷から少ない出血で摘出するのを得意とします。

 2012年4月には前立腺がん摘出術に公的医療保険が適用されました。開腹手術時代の前立腺がん手術が決して悪かったわけではありませんが、「前立腺周囲の構造がよく見える3Dカメラ」と「繊細に動くロボット」が登場したおかげで、おなかにわずか1・5センチの傷が6カ所できるだけで、繊細かつ低侵襲に手術することが可能になりました。

 特筆すべきは出血量です。開腹手術では平均800ミリリットルだった出血が、ロボット手術では50ミリリットル程度になりました。傷も小さいため、退院する頃には痛みを感じない人が大半です。

 また、尿道を長く残せるため、術後に起きやすい尿漏れが起きにくく、回復スピードもとても速くなっています。ただし、がんが進行している場合などは、がんを残さないよう、尿道や周囲の神経を十分に残せない場合があります。その場合は尿漏れの回復を早くするため、骨盤底筋運動(主に肛門を締める運動)を指導することがあります。

 ロボット導入後、前立腺がんの再発率も明らかに低下していますので、機能を十分に残しながら「がん」を根治することが可能になりました。

 良い点ばかりをお話ししてきましたが、残念ながらすべての患者さんにロボット手術が行えるわけではありません。頭を25度下げた状態(頭低位)で2~3時間の手術を行いますので、①心臓が悪い②緑内障がある③脳血管障害がある④肺機能が悪いといった患者さんにはロボット手術を行えないことがあります。

 青森県内には弘前大学病院に2台、青森県立中央病院に1台、三沢市立三沢病院に1台と4台態勢で治療に当たっていますが、ロボット手術を行える施設が限られています。「受診したらすぐ手術」と覚悟を決めている患者さんもいますが、前立腺がんは急速に進行することは極めてまれですので、少しの間、待ってもらうこともあります。

 現在、実用化されている「ダビンチ」以外にも複数のロボット支援システムが開発されています。数年内にはさらに進化したロボットも登場する予定ですので、多くの病院で導入が可能になると思われます。最先端の技術に大きな期待をしたいところですが、ロボット手術とはいえ実際に手術を行うのは医師であるため、優秀なロボットを上手に使いこなす医師の腕が重要である点は今も昔も変わりません。

 次回は小さな腎がんに対するロボット手術(ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術)について解説します。

<アピタル:弘前大企画・知って得する 泌尿器科の話>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/hirosaki/

(弘前大学大学院医学研究科先進血液浄化療法学講座准教授 畠山真吾)