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 長崎県と佐世保市が建設を進める石木ダムの水没予定地、同県川棚町川原(こうばる)地区が18日、土地の明け渡し期限を迎えた。県は19日から家屋撤去などの行政代執行(強制収用)が可能になるが、住民は立ち退きを拒む構えだ。中村法道知事は18日談話を発表し、引き続き住民に「事業への協力」を求めていく考えを示した。

 移転を拒む住民の一部と支援者ら約30人は18日、県庁を訪れ、前日の集会で採択した宣言文を平田研副知事に提出。今後も川原地区に住み続ける意思を示し、ダムの建設断念を求めた。

 上京中の中村知事は「いまだ明け渡しいただけないのは大変残念」とするコメントを発表。治水・利水面での事業の必要性を訴えつつも、行政代執行には言及せず「事業に協力してもらえるよう、働きかけを続けたい」とした。知事はこれまで行政代執行について「選択肢として排除しない」と繰り返してきた。だが当面は実施には踏み切らず、住民との話し合いを継続する方針だ。

 水没予定地の川原地区では、監視のための「ダム小屋」に雨が降るこの日も、住民の松本マツさん(92)と岩永サカエさん(79)が詰めた。育てている野菜の成長ぶりに話が及び、松本さんが「もう国の土地。私の畑じゃなかね」と言うと、岩永さんは押し黙った。

 松本さんの孫の好央さん(44)は自宅隣の鉄工所で作業を続けていた。高校2年の長女晏奈さんに「19日には家を壊しに来るの?」と尋ねられ、「お父さんも、お母さんもいる。村の人たちもついている、心配いらない」と答えた。(原口晋也、小川直樹)