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 名前や連絡先、家族構成、資産、購買履歴といった個人情報を預かり、企業に提供する「情報銀行」というビジネスが動き出している。データが新たな商品やサービスを生む可能性があることから、政府も後押しする。情報銀行は情報の提供者に対価を支払うが、情報が漏れるリスクもある。

 「ここから私の健康情報が送られているんですよね。実感はないんですが……」。さいたま市の会社員女性(32)は手首につけたスマートウォッチを指さしながら言った。心拍数や歩数、消費カロリー、睡眠の質などがリアルタイムで記録され、スマートフォンのアプリを通じてサーバーに刻々と蓄積されている。

 さいたま市で女性を含む約100人が参加して、10月から始まり来年1月まで続く情報銀行の実証実験だ。イオンや日本IBM、筑波大学大学院など19の企業や団体が協力して個人のデータを集め、分析する。

 スマートウォッチのほかにも、スマホのアプリと連動して磨き残しの有無がチェックできる特殊な歯ブラシや、イオンで買い物ができるワオンカードも参加者に配られ、健康状態や買い物のデータがサーバーに日々たまっている。企業は商品やサービスの開発にいかす計画だ。

 参加社のひとつ、ベンチャー企業のシルタス(東京)は購買データをもとに、その人に不足している栄養素を分析する。食べた方がよい食品を提案して新たな買い物につなげたり、店頭での品ぞろえにいかしたり、「データを正しく分析できれば、今までにないサービスを生み出せる」と小原一樹代表は期待する。

 栄養バランスに気をつけて食品を買っているか、質のいい睡眠をとれているか、定期的に体を動かしているかといった情報を組み合わせれば、疾病リスクの予測にもつながる。リスクの多寡に応じて料金を変える保険商品を開発するアイデアもある。

 参加者は、実験終了後にスマートウォッチをもらえる。米フィットビット社製で量販店で買えば2万円近くする。冒頭の女性は「高機能の時計がもらえるみたい」と夫に誘われたのも、参加の理由だったという。

 女性は「私の情報が何らかの役に立てばいい。きちんとした企業や大学が参加しているので、個人情報をさらしているという抵抗感はあまりない」と言う。

 実験には総務省が約2千万円を出し、さいたま市もシステムの維持管理費を補助している。市では社会保障の関連支出がこの10年で倍増し、約1300億円に上る。環境未来都市推進担当の有山信之さんは「データを政策に生かすことで、支出を抑えられるかもしれない」と話す。

 電通系のIT企業、マイデータ・インテリジェンスも7月から年末まで、40~50代の男性会社員を中心に1万2千人の個人情報を預かっている。キリンホールディングスなど約10社に個人の買い物や移動の履歴などを提供し、提供先は買い物に使える数百円分のポイントなどを対価として出す。マイデータの森田弘昭取締役は「個人情報の集積データは、石油のような大きな利益を生む価値を秘めている。経済活動に不可欠な存在になる」と話す。

 有料放送のスカパーJSATは7月から利用者約2500人を対象に、契約者の登録情報や視聴履歴などを他社に提供する代わりに、視聴料金を割り引くサービスを試行的に始めた。富士通や大日本印刷なども、東京・丸の内で働く人たちを対象に職歴などの個人情報を預かって他社に渡し、副業につながる情報を提供する実証実験を年明けから計画している。

相次ぐ情報流出事件

 現状ではネットサービスを通じ…

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