[PR]

 岐阜県土岐市の木下宏明さん(65)は1993年、39歳のとき大腸がん手術を受けた。当時、名古屋市の青少年向け劇団の役者兼裏方で、10日後に迫った公演は代役を立てた。

 本人告知はまだ一般的でなかったが、内視鏡検査で「ここだ、ここだ」という医師の声が聞こえた。不安のなか「隠せない」と妻が教えてくれた。手術まで10日間は点滴だけで、がくんと痩せた。

 学生時代は福祉ボランティア。その後も劇団員として、「命を大切に」とよく呼びかけた。でも死を意識した時、その言葉のなんと軽かったことか。

 思い出したのは、山口県の高校1年のときに胃がんで死んだ父。母は病名を隠したが、父はどう思っていたのだろう。「やりたいことをやるんだ」と真面目一筋の国鉄マンだった父が突然、一時退院したときに8ミリカメラを始め、家族を驚かせたことがあった。

 あれから、思い描く人生のコースからずれ始めた。官舎を出ざるを得なくなり、専業主婦だった母が勤めに出た。大学進学のため、神戸で新聞配達をして自活し金をためた。配達エリアは、坂を上れば豪壮な家、下は古い文化住宅が立て込んでいた。自分も4畳半でテレビもない暮らし。社会の矛盾を考えた。結局、大学は中退した。

7月に胃がん手術を受けた記者が、がんになって人生を変えた「先輩」たちを取材しました。28歳で余命半年宣告を受け、いろんな健康法を「やり過ぎた」末に、がん患者の応援雑誌を始めた人や、手術後のつらさを乗り越え、患者や家族の相談に乗っている女性の思いも紹介します。

 大腸がん手術から8年後の20…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

この記事は有料会員記事有料会員記事です。

980円で月300本まで2種類の会員記事を読めるシンプルコースのお申し込みはこちら