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 反対論が巻き起こり、いったんは法制化が見送られた「ダウンロード違法化」をめぐる検討が再び始まる。新たな顔ぶれとなった文化庁の有識者会議の第1回が、27日午前に開かれる。

 権利者の許可無くインターネットに上げられた漫画や写真、論文などのダウンロードのうち、どんな行為を違法とするか。議論が始まった昨年はネット利用の萎縮を危ぶむ声が高まり、国会提案が見送られる異例の事態となった。経済被害が拡大する海賊版への対策と、ネットの自由との落としどころをつけられるのか、新たな案が注目される。

 きっかけは、昨年まで猛威を振るい、逮捕者まででた海賊版サイト「漫画村」だった。出版業界が訴える深刻な被害をふまえ、政府は当初、「抜け穴のない海賊版対策」を目指した。そこで、著作権侵害のものだと明確に知りながらのダウンロードを違法とする著作権法改正案をつくった。これまでは音楽と映像に限って違法だったものをすべての著作物に拡大する案で、常習的に繰り返すなど悪質なものには懲役2年以下か200万円以下の罰金、または両方の罰則もつけた。

 ところが、この案は一部にでも著作権侵害物が含まれれば違法となり、勝手に個人のブログに転載された写真や、アニメのキャラクターを使ったツイッターのアイコンなどをダウンロードしたり、スマートフォンなどの端末内で撮影する「スクリーンショット」(スクショ)をしたりすることも対象になる。実際には権利者から訴えられなければ見逃されることが想定されるとはいえ、違法かもしれないと思えば、情報収集そのものをためらい、萎縮しかねない。ネットでの情報収集ではメモ代わりにスクショを使う人も多く、日常生活への影響が大きいと批判的な世論が巻き起こった。

 「ネットにおける自由という観点から、網を掛けるにしても、せめて網の目を大きくして、マグロは捕まえるけどメダカは逃がす、というような工夫が必要だ」(中山信弘・東大名誉教授)

 著作権界の重鎮を筆頭に、著作権の専門家ら100人余りが、違法とする要件を絞り込むよう異例の緊急声明を発表。日本マンガ学会(竹宮恵子会長)や日本漫画家協会(里中満智子理事長)なども見直しを求めた。海賊版に権利を侵害されてきたはずの漫画家からも同調の動きが出たことに、自民党国会議員からも、「隙のない規制は、過剰規制だ」と懸念が噴き出し始めた。

 政府からの通常国会への法案提出の期限が目前に迫った今年3月、MANGA(漫画)議連会長の古屋圭司元国家公安委員長など自民党から待ったがかかり、法案提出は見送られた。党内に推進派もいたなか、古屋氏らが文化庁に再検討を促す理屈としたのが、「当事者の漫画家の意見が十分に聴かれていない」という法改正までの手続き上の問題だった。

 それから8カ月。いったんは「白紙」にされた後、水面下で関係者との調整を続けてきた文化庁は、検討の場を仕切り直し、当事者の漫画家らも含めた新しい検討の場を設置。有識者の委員には、海賊版対策の必要性を訴えてきた出版関係者だけでなく、利用者側の立場のメンバーも含まれており、当初案より要件を絞り込む方向で進む見通しだ。

 原作をそのままひとまとまりでダウンロードする場合や、もとの作品が売れなくなるなど著作権者に実害がある場合などに限って違法とすることが想定される。

 文化庁は来年1月ごろまで3回程度の会合を想定しており、要件を絞り込んだ案を来年の通常国会に提案することを目指している。(上田真由美)