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 人工的に培養され、無限に増え続ける「不死細胞」ががん治療や製薬などの研究に用いられている。元をたどれば、米国で半世紀以上前に亡くなった女性から採取された細胞だ。現在も世界各地で重宝されているが、価値観や技術の変化に伴う課題もある。

 米首都ワシントンから車で4時間のバージニア州クローバー。舗装道から外れ、雑木林に向かうタイヤのわだちをたどると、視界が開けた。そこには20ほどの墓石が並んでいた。

 「ヘンリエッタ・ラックス(HeLa)、ここに眠る。彼女の不死の細胞は永遠に人類を助け続けることでしょう」

 本をかたどった真新しい墓石には、こう書かれていた。

埋葬、墓石すらなく

 ヘンリエッタ・ラックスは1920年、たばこ農家に生まれ、墓の裏手にあるかつての奴隷小屋で育った。21歳で結婚し、メリーランド州ボルティモア近郊に移り住んだヘンリエッタは51年1月、腹部にしこりを見つけ、ジョンズ・ホプキンス病院を受診した。

 子宮頸部(けいぶ)にがんを見つけた担当医は、麻酔で眠っていたヘンリエッタから組織を切り取り、ジョージ・ガイ博士に渡した。ガイ博士は、がんとウイルスの専門家だったが、ガラス管の中でも育つヒト細胞を作ろうと20年以上研究していた。採取した細胞を研究に使うことを、ヘンリエッタは知らされていなかった。

 当時、カエルやマウスの細胞培養は成功していたが、ヒトでは誰も成功していなかった。理由は、ヒトの細胞の特色だ。

 ヒトの正常な細胞は、むやみに分裂をせず、不具合があると自死する品質管理の仕組みがある。また、50回ほど分裂すると寿命を迎えるため、培養しても増えずにすぐ死んでしまう。ところが、ヘンリエッタの細胞は採取された後も、24時間で倍になるほど急激に増殖し、死ななかった。

 後にわかることだが、ヘンリエ…

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