「もう何もおへん」全焼の祇園お茶屋、おかみは前を向く

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佐藤秀男
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「吉うた」のおかみ、高安美三子さん(左)と志賀内泰弘さん=京都市東山区、佐藤慈子撮影
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 京都・祇園で一見(いちげん)さんお断りの甘味処を営む元芸妓(げいこ)を主人公にした短編小説集が、この秋発売された。モデルとなったのは、今年7月の火災で全焼した祇園の老舗お茶屋「吉うた」のおかみ、高安美三子(みみこ)さん(79)。著者は「再建を目指すおかあさんの励みになれば」と執筆を続けている。

 小説集は「京都祇園もも吉(きち)庵(あん)のあまから帖(ちょう)」(PHP文芸文庫)。もも吉庵の描写には、失われた吉うたの光景が描かれている。

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9月に発売された「京都祇園もも吉庵のあまから帖」(PHP文芸文庫)。月刊「PHP」で2018年10月号から連載している同タイトルの読み切り小説を書籍化。祇園で一見さんお断り、メニューは「麩(ふ)もちぜんざい」のみの小さな甘味処「もも吉庵」を営む元芸妓のもも吉と、様々な悩みを抱えた客たちの交流を描く

 〈格子の引き戸を開けると、転々と連なる飛び石が「こちらへ」と言うように人を招く〉

 〈襖(ふすま)を開けると、店内は、L字のカウンターに背もたれのない椅子が六つだけ。カウンターの内側は畳敷きだ〉

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 舞妓(まいこ)になるため1…

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