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 様々な細胞や組織になれるiPS細胞(人工多能性幹細胞)。日本発の成果として注目されるが、世界では競争に遅れをとっているとの指摘も出てきた。研究の目標時期を示した国の工程表も今年消えた。何が起きているのか。

 「1日でも早く患者さんに届けたい」。京都大iPS細胞研究所の山中伸弥教授は、講演のたびにiPS細胞の実用化を訴える。

 だが、文部科学省は9月、iPS細胞をめぐる臨床研究や治験を始める目標時期を示した工程表づくりをやめた。文科省の担当者は「(工程表によって)患者に過度な期待を持たせてしまう、といった意見もあった」と説明。

 工程表は2009年に初めて作られ、13年、15年と改訂を重ねていた。改訂のたびに目標が数年から10年近く遅れるものもあり、実態と隔たりもあった。今回からは、病気やけが別の一覧表で研究の進み具合を見せる方式に変えた。

 iPS細胞を使った世界初の移植は14年。色素上皮細胞という網膜の組織で、09年の工程表にあった5年以内という目標は達成した。だが当時、理化学研究所で研究を主導した高橋政代・ビジョンケア代表取締役らは、18年までに販売を開始する目標も示していたが、未達成だ。治療用の細胞の販売に必要な企業治験はようやく始まろうとしている段階だ。

 治験や研究が全体的に遅れがちな理由について、高橋さんは今月、朝日新聞の取材に、「目の領域は比較的順調に進んでいる」と説明する一方、幹細胞は「生もの」で、遺伝子が変化するため、目的の細胞だけを高い品質でつくれるわけではなく、「甘い見通しで進められるものではない」と話した。

 19年度中の色素上皮細胞の企業治験開始をめざす大日本住友製薬の木村徹常務執行役員は「再生医療製品に求められる高い安全性に一つずつ丁寧に対応しているため、時間がかかる」と話す。

 実用化には、iPS細胞の作製や備蓄といった各工程での品質管理も重要となる。iPS細胞を備蓄する京大iPS研では17年に、ラベルを貼り間違えるミスがあり、一部の臨床研究の遅れにつながった。

 iPS細胞からつくられる細胞の品質をチェックする川真田伸・神戸医療産業都市推進機構細胞療法研究開発センター長は、「ラベルを貼り間違えたときなど、体制を見直す機会があった。iPS細胞研究の方向性を山中さんに丸投げした政府が問題だ」と批判する。世界でもiPS細胞を使った治験が進み、日本が取り残されつつある状況をふまえ、「税金を使う以上、医療経済を理解した上で、世界の動向を見ながらiPS細胞がどんな疾患なら使えるのか、5年後10年後の策を考えるべきだ。全体の計画を今からでも見直すことが必要だ」と話す。

 現在、海外では細胞治療よりも…

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